サクユリが咲きました(7/3更新)

今週の見ごろの植物
What’s in Bloom

毎週、園内を巡回しておとどけします。
サクユリ(ユリ科)

本館のウッドデッキから回廊へ階段を降りたところに鉢の展示が、その先の展示館の中庭には地植えの植栽がそれぞれあります。本種は伊豆諸島の固有種で、英国の植物学者であるジョン・ギルバート・ベイカー(John Gilbert Baker,1834-1920)がヤマユリの変種として学名Lilium auratum Lindl. var. platyphyllum Bakerを発表しました。その後、牧野博士はLillum platyphyllum(Baker)Makinoとして別種扱いしましたが、現在ではヤマユリの変種とするベイカーの見解が一般的となっています。和名は自生地・青ヶ島の方言でサックイネラという地方名に由来するとされます。牧野博士は香気も強い本種をじつに見事であると絶賛し、日本のユリの仲間で最も巨大で王様であると述べています。有名な園芸品種(オリエンタル系)である‘カサブランカ’などを生み出した交配親としても知られています。

園内では母種の
ヤマユリも見ごろです。展示館そばの芝生広場から階段を降りた先と、南園の石灰岩植生園から結網山へ登る途中にそれぞれ植栽があります。本州(近畿以東)の山地に生育します。サクユリもヤマユリも四国に自生はありませんが、両種とも観察できるのは植物園の強みです。

変異もあるため多少の違いはありますが、典型的なもので比較すると、サクユリの花はヤマユリの花よりも一回り大きめです。また、サクユリの花被片には、ヤマユリに目立つ赤褐色の斑点がないか、少ない傾向があります。サクユリは全体的に大柄で、茎は太く直立します。一方、ヤマユリの茎はサクユリと比べると細く、花が咲くとその重みで弓なりに傾くことがよくあります。ほかにも、サクユリの学名の、platy(広い)phyllum(葉)が示すとおり、ヤマユリよりも葉が広く厚くなる傾向があります。
ぜひこの機会に両種を観察し見比べてみてください。その際は葯の花粉に気を付けて。衣服に付くと洗濯をしてもなかなか落ちないので、特に香りを嗅ぐ際はご注意ください。
キバナノセッコク(ラン科)

園内各所の樹木に着生していますが、今回は南園のアカシデやイロハモミジに着生した株の花付きが非常に良いため、こちらの観察をおすすめします。


本種は四国以西・伊豆八丈島に分布し、山地や社寺林などの樹幹や岩上に着生します。全体の草姿は近縁の
セッコクに似ていますが、本種の花は黄緑色であること、セッコクよりも遅れて盛夏に咲くことや、セッコクは葉がない茎に花がつくのに対し、本種は葉がある茎にも花をつける、などの違いがあります。1891(明治24)年、東京帝国大学の植物学教室に出入りできなくなった牧野博士は、不屈の精神で自費出版を継続した『日本植物志図篇』第1巻第8集において本種を新種として発表しました。学名はDendrobium tosaense Makinoで、種小名のtosaenseは土佐(高知県)の、を意味します。
主に園芸目的の盗掘が原因で絶滅が危惧されており、環境省レッドリスト(2025)では絶滅危惧II類(VU)に、高知県レッドデータブック(2022)では絶滅危惧IB類(EN)に指定されています。
ムカデラン(ラン科)


ただ今、展示館中庭のハナノキに着生したものが満開です。多数の花が咲き見ごろなので、ご覧になりたい場合はお早めの来園をおすすめします。本州(関東地方以西の太平洋側)・四国・九州、朝鮮半島(南部)に分布し、日当りのよい岩壁や樹幹上に着生します。牧野博士は1891(明治24)年、『日本植物志図篇』第1巻第7集にて植物図と記載文を添えて本種を新種として発表しています。和名は多肉質の並列する葉がムカデのように見えることから。和名から先行するイメージと違い、花はとても小さいながら桃色で可愛いです。


花は1cmに満たないほど小さいものの、きちんとラン科らしい姿をしています。ラン科の花粉は粉状でなく大きな塊となっており、花粉塊とよばれます。花粉塊の基部には粘着体という粘着シートのような器官があり、花に頭を突っ込んだ虫などの身体に花粉塊が付着する仕組みを持っています。虫に付着した花粉塊はそのまま運ばれていき、虫が他の花を訪れた際に雌しべの窪みにちょうどはまって受粉します。
爪楊枝の先を蕊柱(ずいちゅう)に擦り付けると、肉眼ではピントが合わないくらい小さな花粉塊が付着しました。例年、結実も見られるので生き物が花粉を運んでいることは間違いありません。いったいどんな生き物が花粉を運ぶのでしょう。
広報課 西村佳明

