キバナノツキヌキホトトギスが見ごろです(10/16更新)

今週の見ごろの植物

毎週、園内を巡回しておとどけします。

本館と展示館を結ぶ回廊ではホトトギスやジョウロウホトトギスに続いて、キバナノツキヌキホトトギスとキイジョウロウホトトギスが咲き始めました。ホトトギスの仲間がにぎやかな回廊は要チェックです。

ホトトギスの仲間について
花被片に見られる斑点模様を、鳥のホトトギスの胸にある模様に見立てた
ホトトギス 回廊にて10/16撮影
属名の Tricyrtis はこぶ状の3つの蜜腺に由来する
キイジョウロウホトトギス 回廊にて10/16撮影

秋の山野を彩るホトトギスの仲間(ユリ科ホトトギス属)。ホトトギスの名は、花被片に見られる斑点模様を、鳥のホトトギスの胸にある模様に見立てたものです。また、属名の Tricyrtis はギリシャ語の「3」を意味する tri- と、「こぶ状の」を意味する kyrtos に由来し、外側の3枚の花被片の基部にある、こぶ状に膨らんだ蜜腺にちなみます。

ホトトギス属は世界におよそ20種類が知られ、そのうち12~13種類が日本に分布します。さらに、その中には日本だけに分布する固有種が10種類あり、東アジア、とりわけ日本列島は、ホトトギス属の種分化が進んだ、いわば「ホットスポット」といえる地域です。

しかも、日本に分布するものの中には、限られた地域にしか自生しないものも少なくありません。そうした種類は、自生地の開発などによって生育環境が失われるだけでなく、花の美しさから園芸目的の盗掘の対象となることもあり、絶滅が危惧されているものもあります。

キバナノツキヌキホトトギス(ユリ科)
キバナノツキヌキホトトギス 回廊にて10/16撮影

今回ご紹介するキバナノツキヌキホトトギスも、そんなホトトギスの仲間のひとつです。

本種は10種類ある日本特産種のうちの一つで、宮崎県の尾鈴山とその周辺にのみ自生します。渓谷など湿り気のある岩上から垂れ下がるように生育します。黄色の花は大変美しく、本種も例にもれず、園芸目的の盗掘の憂き目に遭ってきました。環境省レッドリスト(2025)では絶滅危惧IB類(EN)に指定されています。

葉の基部が茎を抱いた状態で合着する

葉の基部が茎を抱いた状態で合着し、和名は茎が葉を突き抜けて見えることに由来します。

キバナノツキヌキホトトギスの花 花冠中央には1本の雌しべと6本の雄しべがある
キバナノツキヌキホトトギスの花 外花被片の基部には蜜腺がある

花は葉腋に1~2個ずつ、上向きに平開してつき、花柄は短く、葉に張り付くように咲きます。

ホトトギスの仲間の花の基本構造は、「3」とその倍数がキーワード。花被片は外側3枚と内側3枚の計6枚、雄しべは6本、雌しべの柱頭は3裂し、子房も3室に分かれます。そして、外側3枚の花被片の基部には、それぞれ袋状に膨らんだ蜜腺があります。冒頭でご紹介した学名 Tricyrtis――ギリシャ語で「3」を意味する tri- に繋がります。花を見つけたら、ぜひ「3」を探してみてください。

クサヤツデ(キク科)
クサヤツデ 土佐の植物生態園にて10/16撮影

正門から土佐の植物生態園に入って、1つ目の角を右に折れて進んだ2つ目の角の手前、右側にひっそりと花を咲かせています。本種は本州(神奈川県~和歌山県までの太平洋側)・四国・九州に分布する日本固有種で、湿った林縁や林床に生育します。

葉は掌状に中裂する
花は暗紫色で、小花は頭花に普通1個

クサヤツデという和名から、ウコギ科のヤツデの仲間を想像してしまいますが、実はキク科の仲間。和名は、掌状に中裂する葉のようすをヤツデに見立て、草本であることに由来します。花は暗紫色が基本で、その色合いから目立ちにくいことに加え、林床などの木陰に生えることから、意識して探さないと見落としてしまいそうです。しかし、ひとたび足を止めて花をよく見てみると、その芸の細かさに感嘆します。

花冠は先端が5裂し、それぞれがくるりと外側へ反り返ります。暗紫色の花冠が細く伸び、その先端だけが巻き上がるように反り返る姿は、まるでバレリーナがつま先立ちで踊っているかのようです。

【参考】ソナレノギクの頭花(拡大)
キク科の植物の頭花は小花が多数集まった集合体であることが多い
クサヤツデの果実 花後、冬にみられる

キク科の植物の多くの花は、頭花(とうか)と呼ばれる、小さな花(小花)が集まった集合体が「一つの大きな花のように」振る舞います。ところがクサヤツデは、頭花を構成する小花は(基本は)一つ。なので、受粉後結実すると、果実は頭花に普通1個です。

小さく目立たない花だからこそ、顔を近づけてじっくり観察してみてください。目立たない花に気づけた分、きっと得をした気分になりますよ。

コヒガンザクラ‘十月桜’(バラ科)
コヒガンザクラ‘十月桜’ さくら・つつじ園にて10/16撮影

北園のさくら・つつじ園の上段では、一足早い桜をお楽しみいただけます。牧野博士は「わが国で世界に対して誇るに足る第一の植物はさくらである」と語るほど大の桜好きで知られ、そんな博士の想いを汲み、当園にはサクラの仲間が約40種類植栽されています。本種はその名の通り、10月ごろから淡紅色の八重の花を咲かせます。

博士は『植物一日一題』の中で、本種が日蓮大聖人の御入滅された10月13日の御会式(おえしき)の時期に咲くことから「御会式桜」とよばれることについて、「御会式があろうがあるまいが、時が来れば吾不関焉(われかんせずえん)と咲き出づる」と、仏様の功徳によって花が咲くという説を一刀両断しています。

当時、独立種と考えられていたコヒガン(Prunus subhirtella)の基本的な性質を持ちながら、秋にも咲くという特徴から、博士はコヒガンの変種と考え、1908(明治41)年に『植物学雑誌』第22巻258号にて学名 Prunus subhirtella var. autumnalis Makino を発表しました。現在では、コヒガン自体がエドヒガンとマメザクラの雑種に由来すると考えられており、‘十月桜’もそのコヒガン系統 Prunus × subhirtella の一品種として扱われています。

蕾は桃色を呈し、花は淡紅色の八重咲き

写真を撮る際は、枝先にズームして撮影すると春を先取りしたかのような写真が撮れるのでおすすめです。花は冬の間も枝先にポツポツと断続的に咲き、春にピークを迎えます。

広報課 西村佳明