キイジョウロウホトトギスの花が咲きました(10/24更新)

キイジョウロウホトトギス(ユリ科) Tricyrtis macranthopsis Masam.

キイジョウロウホトトギス(回廊にて、10/24撮影)

当園の秋の人気者、ジョウロウホトトギスは見ごろが終盤となり、入れ替るように近縁種のキイジョウロウホトトギスが見ごろとなりました。キイジョウロウホトトギスはその名のとおり紀伊半島に固有で、山中の湿った岩肌から垂れ下がるように生えます。ジョウロウホトトギスと同様、黄色の釣り鐘状の美しい花を咲かせることから園芸目的の盗掘も横行し絶滅が危惧されており、環境省レッドリスト(2020)では絶滅危惧II類(VU)に指定されています。

今週の見ごろの植物

毎週、園内を巡回しておとどけします。

ハナカズラ(キンポウゲ科)
ソナレノギク(キク科)
テンニンソウ(シソ科)
アリストロキア・トリカウダタ(ウマノスズクサ科)
オオクサボタン(キンポウゲ科)
エッチュウミセバヤ(ベンケイソウ科)
サキシマフヨウ(アオイ科)

さて、ホトトギスの仲間(ホトトギス属)は世界的に見ると東アジアからインドにかけて約20種あって、そのうち日本には12種が自生、さらにそのうちの10種は日本の固有種と、特に日本で種分化が進んだグループです。園内には1)ホトトギス、2)ヤマジノホトトギス、3)チャボホトトギス、4)タイワンホトトギス、5)ジョウロウホトトギス、6)キイジョウロウホトトギス、7)キバナノツキヌキホトトギス が各所に植栽されています。

ホトトギスの仲間の状況

ジョウロウホトトギス …………… ★☆☆ 見ごろは終盤です(葉の傷みあり)

ホトトギス ………………………… ★★★ 見ごろです。

キバナノツキヌキホトトギス …… ★★★ 見ごろです。

キイジョウロウホトトギス ……… ★★★ 見ごろです。

ジョウロウホトトギスとキイジョウロウホトトギスの違いについて

今週末(10/25-26)であれば、ジョウロウホトトギスの花もあり、両種を見比べることができそうです。外見がよく似ている両種ですが、見分けるポイントがいくつかあります。

花の違い:ジョウロウホトトギス(左)とキイジョウロウホトトギス(右)

まずは花の違いから。両種とも花被の内側に紫褐色の斑点が密につきますが、ジョウロウホトトギスは花被の縁まであるのに対し、キイジョウロウホトトギスは縁まで達しません。

葉の違い:ジョウロウホトトギス(左)とキイジョウロウホトトギス(右)

葉にも違いがあって、ジョウロウホトトギスの葉は卵形から長卵形と丸みがあって、基部が左右両側とも茎よりも前面になります。一方、キイジョウロウホトトギスの葉はより細長く、葉の基部はねじれ、片方が茎の裏側になります。観察の際の参考になさってください。

キバナノツキヌキホトトギス Tricyrtis perfoliata Masam. 
キバナノツキヌキホトトギスは見ごろです(回廊にて、10/24撮影)
葉の基部は茎を抱いて合着し、茎が葉を突き抜けているように見える(回廊にて、10/24撮影)

同じく回廊に植栽があるキバナノツキヌキホトトギスも見ごろとなりました。本種は宮崎県の尾鈴山でのみ見られ、渓谷など湿り気のある岩上から垂れ下がるように生育します。和名は葉の基部が茎を抱いた状態で合着し、茎が葉を突き抜けて見えることに由来します。ホトトギスと同様、花は上向きに平開し、黄色の花が大変美しい種類です。本種も例にもれず、分布が限られるうえに園芸目的の盗掘もあり、環境省レッドリスト(2020)では絶滅危惧IB類(EN)に指定されています。

ヒメヒゴタイ Saussurea pulchella (Fisch. ex Hornem.) Fisch.
ヒメヒゴタイ(さくらつつじ園にて、10/24撮影)
ヒメヒゴタイの総苞片の先は弁化し、つぼみの状態でも美しい(さくらつつじ園にて、10/23撮影)

北園のさくらつつじ園と南園の石灰岩植生園ではヒメヒゴタイが見ごろです。本種はキク科の越年草(発芽後、翌年に開花して枯れる)で、北海道から九州の日当たりのよい草原に生育します。生育地である草原は、温暖で湿潤な日本では草刈りや野焼きなど定期的に人の手を加えなければ木が侵入していずれ森や林になります(遷移:せんい)。家屋の屋根が「かやぶき」だったころは草刈り場として大切にされてきた草原は、ライフスタイルの変化や宅地造成などにより減り、それに伴って、本種も今では青森県や千葉県、大阪府などではすでに絶滅、北海道を除く多くの地域で絶滅が危惧されており、高知県レッドデータブック(2022)では準絶滅危惧(NT)、環境省レッドリスト(2020)では絶滅危惧II類(VU)にそれぞれ指定されています。赤紫色のアザミのような花も美しいですが、花が咲く前のつぼみも併せて観察してみてください。本種の総苞片は先が弁化(花弁以外の部分が花弁状になること)し、つぼみの状態でも美しいです。

ツクバネガキ(カキノキ科) Diospyros rhombifolia Hemsl.
ツクバネガキの果実(南園にて、10/24撮影)

南園の50周年記念庭園ではツクバネガキの果実が鮮やかな果実を実らせています。中国の浙江・江蘇地方に分布し、果実が美しく小型であることから観賞用として盆栽や庭木にも用いられます。和名は果実がツクバネに似ることに由来し、中国での呼び名から別名ロウヤガキとも呼ばれます。果実はおいしそうな色をしていますが、渋みが強く食べられないので決して口に入れないように。飴色のつやつやとした果実を観察するのに留めましょう。

広報・ガイド班長 西村 佳明

見ごろの植物

2025年10月 4週目

写真をクリックすると植栽場所や詳しい説明がご覧いただけます。

オオヤマショウガ(ショウガ科)
ツクバネガキ(カキノキ科)
ホトトギス(ユリ科)
ヒメヒゴタイ(キク科)
チャノキ(ツバキ科)
ダルマギク(キク科)
タニジャコウソウ(シソ科)
スイレン属の園芸品種セントルイスゴールド(スイレン科)
サワギキョウ(キキョウ科)
サキシマフヨウ(アオイ科)
コヒガンザクラ‘十月桜’(バラ科)
キバナノツキヌキホトトギス(ユリ科)
キイジョウロウホトトギス(ユリ科)
カリガネソウ(シソ科)
オオクサボタン(キンポウゲ科)
アリストロキア・トリカウダタ(ウマノスズクサ科)
見ごろマップ

2025年10月 4週目

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