カンランが咲きました(11/21更新)
カンラン(ラン科) Cymbidium kanran Makino

宿毛市産の素心で、冴えた淡緑色、三角咲きの大輪花。(11/21撮影)
南園の土佐寒蘭センターでは牧野博士とここ高知県の園芸文化にゆかりのあるカンランが見ごろとなりました。

11/22(土)から11/24(月・祝)には、第21回寒蘭展~その幽玄なる美と香り~が開催され、県内の愛蘭会会員が丹精込めて栽培したカンランを、歴史的銘花から人気の品種まで一堂に展示します。本種がもつ幽玄かつ端正な美と、ふくよかな香りが醸し出す独特の風情をお楽しみいただけますので、ぜひこの機会にご来園ください。
第21回寒蘭展~その幽玄なる美と香り~
| 期 間: | 令和7年11月22日(土)~24日(月・祝) 9:00~17:00 ※但し、最終日の24日は16:00まで |
| 会 場: | 牧野富太郎記念館 本館 映像ホール、五台山ロビー 南園 土佐寒蘭センター |
| 共 催: | 土佐愛蘭会(会長 上村宗男)、土佐香南愛蘭会(会長 森本哲)、 日本寒蘭会(会長 武市修行)、高知県立牧野植物園 |

今週の見ごろの植物
What’s in Bloom

毎週、園内を巡回しておとどけします。


カンランを含むシンビジウムの仲間(シュンラン属、Cymbidium)は、東アジアから東南アジアを中心に、西はインド、南はオーストラリア北東部にかけて分布するラン科の1グループです。このうちカンランは、本州(静岡県以西)・四国・九州・琉球、中国南部、台湾、韓国(済州島)に分布し、主に海岸近くの低山など常緑広葉樹が占める林の林床に生えます(地生ラン)。10月下旬から12月の寒い時期に開花するランだから和名はそのままカンラン。本種は牧野博士が1902(明治35)年、「植物学雑誌」16巻において学名を発表しており、和名がその学名(C.kanran)のもとになっています。

素心。正三角咲きの中輪花。

濃紫紅色の一文字咲き。室戸とあるが、宿毛市産。

葉と花に覆輪が入る。栽培品種の命名は土佐寒蘭の普及に尽力した西内秀太郎氏。
古くは葉姿を楽しむ植物として富裕層や文化人に愛されましたが、昭和初期になると花色や花の形を愛でるようになりました。カンランの魅力は細い葉と花茎、花弁の織りなす、直線と曲線の空間美。この美意識はカトレアやコチョウランなど、より大きく、より豪華になるよう育成されてきた洋ランとは一線を画します。
ここ高知県では東西を中心に県内各地に自生地があり、さまざまな花色や花形が見られたことから愛好家からは土佐寒蘭と呼ばれ珍重されてきました。各地で愛蘭会が設立され、展示会が開かれるなか、県内で見つかった黄色や桃色の花を咲かせる株は大変珍しく、昭和30~40年代の蘭ブームのころは好景気も相まって、今では考えられないほどの価格で取引され、投機の対象にもなりました。

濃紫紅色の大輪で一文字咲き。

三角咲きに近い緑白色の花。舌(唇弁)には桃色の斑点がつく。

桃色の三角咲き。宿毛市西谷産(西谷物)。
その過熱ぶりは相当だったようで、採取の過程で山の形が変わったなんて話も耳にします。乱獲が横行した結果、環境省レッドリスト(2020)では絶滅危惧ⅠB類 (EN)、高知県レッドデータブック(2022)では絶滅危惧IA類(CR)と、全国的に絶滅が危ぶまれています。蘭ブームも終わって久しい現在でも、野外で開花サイズの野生個体を見かけることはめったにない希少種です。

当園では高知県の寒蘭愛好家が命名した「土佐寒蘭」を中心とする約260の園芸品種を保存しており、南園の土佐寒蘭センターでは、写真でご紹介した園芸品種を含む、開花株、葉姿の美しいもの、葉芸品などをご覧いただけます。


冒頭でもお伝えしたとおり、11/22(土)から11/24(月・祝)には、第21回寒蘭展~その幽玄なる美と香り~が開催されます。県内の愛蘭会会員が丹精込めて栽培したカンランを、歴史的銘花から人気の品種まで一堂に展示します。本種がもつ幽玄かつ端正な美と、ふくよかな香りが醸し出す独特の風情をお楽しみいただけますので、ぜひこの機会に高知県が生んだ花卉園芸文化「土佐寒蘭」をご覧ください。
参考文献:渡辺壽夫ほか.2015.最新版土佐寒蘭名銘品解説.土佐愛蘭会
広報・ガイド班長 西村 佳明
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