トックリキワタが咲きました(11/28更新)
トックリキワタ(アオイ科) Ceiba speciosa (A.St.-Hil., A.Juss. & Cambess.) Ravenna

温室ではトックリキワタが鮮やかな桃色の花を咲かせています。

今週の見ごろの植物
What’s in Bloom

毎週、園内を巡回しておとどけします。


トックリキワタは温室内、らせん階段(エレベーター)を上るとご覧いただけます。ヒスイカズラが絡みついた柵の向こう、天井近くまで伸びた枝の先に花がついているので、しっかりと観察するなら双眼鏡や望遠レンズのついたカメラの持参をおすすめします。


本種は南米に分布する落葉高木で、花が美しいことから植物園の温室に植栽されるほか、温暖な沖縄県では街路樹にも用いられます。和名は成長とともに幹の基部が膨れていく様子を日本酒を入れる徳利(とっくり)に見立て、種子の綿毛をカポック綿と呼んで詰め物などに利用することから。桃色の花弁は5枚で、花の中心から1本の花柱が伸び、筒状の葯(やく)を突き抜けて柱頭がつきます。幹にはするどい棘があります。
昨年(2024年)にも少数の開花がありましたが、まとまった数の開花は2019年(6年前)以来。温室担当者が花を咲かせようと肥料や水やり、剪定などを工夫しました。蕾もまだまだたくさんあり、しばらくは花が楽しめそうです。
クチナシ Gardenia jasminoides Elli.



ふむふむ広場や薬用植物区、結網山など園内各所でオレンジ色を帯びた果実を実らせています。本種は本州(静岡県以南)・四国・九州・琉球、中国南部、台湾、インドシナ、ヒマラヤに分布し、山地の林縁などに生育します。花はよい香りがすることから人家に植栽されますが、観賞用には八重咲きの園芸品種を用いることが多く、この場合は結実しません。
クチナシ色素って聞いたことはないですか?オレンジ色の果実には水溶性の黄色色素であるクロシンとクロセチンが含まれ、栗きんとんや沢庵の着色料として有名ですが、原材料表を見てみるとたくさんの加工食品にも利用されていることがわかります。また、本種の果実を湯通しまたは蒸したのちに乾燥させたものを山梔子(サンシシ)と呼び、胆汁の分泌促進や消炎鎮痛作用があります。



ものは試しと、クチナシ色素で食品を染めてみました。生の果実を割って15分ほど煮立たせたあと粗熱を取り、あらかじめ浸水しておいた米に入れて炊くと黄色いごはんが炊けました。香りや味にほとんど影響はなく、鮮やかな黄色が食卓を華やかに演出できそうです。
コヒガンザクラ‘十月桜’ Prunus × subhirtella Miq. ‘Autumnalis‘

秋が深まり肌寒くなったこの時期に、さくら・つつじ園では八重の淡紅色の桜の花をお楽しみいただけます。コヒガンザクラ‘十月桜’は和名のとおり10月から冬にかけてと、春に咲く「二季咲き性」の桜で、エドヒガンとマメザクラの雑種と推定されています。当園には園芸品種を含む約40種類の桜の植栽がありますが、本種とコブクザクラが開花のトップバッター。春の開花と比べると花数は少なく枝先にまばらに咲くので、株全体というよりは枝先をアップにして撮影すると一足先に桜の華やかな写真が撮れます。春に注目されがちなさくら・つつじ園ですが、本種を見に足を運んでみてはいかがでしょうか。
広報・ガイド班長 西村 佳明


