パナマソウが咲きました(7/10更新)

今週の見ごろの植物

毎週、園内を巡回しておとどけします。

パナマソウ(パナマソウ科)
温室にて7/8の16時ごろ撮影

温室内、ゾウタケの道向かいとジャングルゾーンのエレベーターの乗り口そばの2か所に植栽があります。7日(火)に1輪が、翌8日(水)に2輪がそれぞれ開花し、この計3輪については本当の見ごろが過ぎてしまいましたが、面白い見た目の花を咲かせるのでこの機会にぜひ紹介させてください。

本種の葉は2メートル近い葉柄をもち、その先にうちわ状の大きな葉身をつける

本種は中米から南米北西部に分布する大型の多年草です。つば付きの帽子であるパナマ帽は本種の若い葉を編んでつくられます。うちわ状の葉が特徴的で、学名のCarludovica palmataの種小名palmataは「手のひらのような」という意味で、葉の形から付けられたものです。その葉の形や葉鞘のようすからヤシ科に近縁と考えられてきましたが、DNA解析が進んだ結果、本種とヤシ科の類縁関係は遠い ‘他人の空似’ であることがわかっています。本種の花は見た目がダイナミックに変化します。

開花前 緑色の苞に包まれている
開花直後は不稔の雄しべが花序全体を包む

本種の花(花序)は緑色の苞に包まれており、開花する前はトウモロコシのような見た目をしています。十分に育った蕾は夕方ごろ開花し、苞が脱落した開花食後は、まるで素麺のような、不稔の雄しべが20cm前後の花序全体を包む特異な姿をしています。

雌花から生える不稔の雄しべは翌朝には脱落する
雄花と雌花が規則的に並ぶ

不稔の雄しべはなんと翌朝には脱落します。すると、雌花に囲まれた4つの雄花がダイヤのように規則正しく並んだ肉穂花序が観察できます。

脱落した雄花 実体顕微鏡で観察すると花粉がついた多数の葯が確認できた
ほとんどの雄花が脱落し、残った雄花も黒ずみ傷んでいる 

これら雄花は葯が裂開して花粉を晒すようになると脱落し、最終的には雌花だけが残ります。脱落した雄花を植物研究交流センターの実体顕微鏡で観察すると、花粉がついた多数の葯が確認できました。今回の開花だと開花から2日くらいで雄花の脱落まで進みました。一連の流れは本当にあっという間で、姿だけでなくその儚さも相まって、妙に人を惹きつけます。

7/10現在、ゾウタケの道向かいとジャングルゾーンのエレベーターの乗り口そばの2か所にそれぞれ1つずつ蕾が残っているので、運がよければ素麺のような不稔の雄しべや、雄花と雌花が規則的に並ぶ花序を観察できるかもしれませんね。

ハマオモト(ヒガンバナ科)
土佐の植物生態園にて7/10撮影

土佐の植物生態園で白い花を咲かせています。冬の霜や寒さで地上部が腐ってしまうこともありますが、生長点がある地下の鱗茎には影響がないのか、毎年立ち直って花を咲かせてくれます。一般にはハマオモトという名よりも、別名であるハマユウという名のほうが有名かもしれません。和名の由来は浜に生え、オモトのような葉をもつことから。

6枚の花被片とそれに沿うように6本の雄しべがあり、花冠の中央から1本の雌しべが伸びる
幹に見える部分は葉の葉鞘部分が重なって筒状になった偽茎であり茎ではない

本種は関東南部から沖縄までの海沿いの砂地に育つヒガンバナの仲間で、国外では中国や台湾、マレーシア、インドなどで見られます。花は夜に強く香り、スズメガなど夜間に活動する昆虫を誘引します。日中もうっすら甘い香りが残っているので顔を近づけて香りを嗅いでみてください。

幹のように見える部分は、地下の鱗茎から伸びた葉の葉鞘部分が幾重にも重なって筒状になった「偽茎」で、幹でも茎でもありません。別名のハマユウは浜木綿と書き、昔の「木綿(ゆう)」は、現在のコットンではなく、主にコウゾやカジノキなどの樹皮から作られた白い繊維のことを指し、本種の偽茎を形づくる白色の葉鞘部分を木綿(ゆう)に見立てたことに因ります。

花後に子房が膨らんで結実する
種子はコルク質で海に浮き、海流に乗って遠くまで運ばれる(2025年撮影)

海沿いの環境に適応した「海浜植物」であり、花が終わるとできるコルク質の白くて大きな丸い種子は乾燥に強く、日照り続きの砂浜の上で乾いてしまっても容易に発芽します。また、波に流された際はプカプカ浮かんで海流に乗り、遠く離れた場所まで運ばれます(海流散布)。

タキユリ(ユリ科)
和名は多肉質の並列する葉がムカデのように見えることから

ただ今、展示館中庭や、南園の温室そばから50周年記念庭園へと下るスロープの壁面で見ごろです。本種はカノコユリの変種で、四国と長崎県西彼杵(にしそのぎ)半島・九十九島(くじゅうくしま)に分布し、崖や岸壁などに生えます。土佐の言葉で崖のことをタキというそうで、和名は本種が生える生育環境が由来となっています。

茎が細くて下垂し、花はうつむき気味になる

茎が太くて立つカノコユリと比べ、本種は茎が細くて下垂し、花はうつむき気味になる点で異なります。母種の和名であるカノコユリの名のとおり、本種も鮮赤色の斑点が鹿の子模様のように花被片一面について大変美しく、毎年楽しみにしているお客様も多いと思います。茎が枝垂れて花が道に飛び出しているものもあるので、通りかかる際は肩や足などに触れないように気を付けてください。衣類に花粉が付くと洗濯してもなかなか落ちないので注意が必要です。

広報課 西村佳明