【11/28】見ごろの植物を更新しました
日中も肌寒くなり、園内各所ではカエデの仲間の紅葉が始まりました。晩秋の園内で花と紅葉を楽しみませんか?
それでは、今週も園内をくまなく調査した「いまが見ごろの植物」をガイド担当がお届けします。
今週の見ごろの植物
What’s in Bloom
毎週、園内を巡回しておとどけします。
さて、植物園の起源は薬になる植物を集めた薬草園にあることをご存じでしょうか。現存する植物園の中で最も古いとされるイタリアのパドバ植物園もそうですし、東京都文京区にある小石川植物園は徳川幕府が設けた「小石川御薬園」をルーツに持ちます。筆者が当園の職員になった当初は薬用植物栽培班に所属し、現在でも兼務という形で国内の製薬メーカーとの薬用植物の栽培研究に関わっています。今週は少し趣向を変え、見ごろをむかえた薬用植物3種を、生薬(しょうやく:原料を薬に加工したもの)とともにご紹介しようと思います。
土佐の植物生態園や薬用植物区、南園(の石灰岩植生園)では、シマカンギク(キク科)が離れていても気づくくらい鮮やかな黄色の花を咲かせています。本種は本州(近畿以西)から九州、屋久島、台湾、中国(東部)、朝鮮に分布し、日当たりのよい場所に生えます。本種またはキクの頭花を乾燥させたものを菊花(キクカ、左の写真)と呼びます。解熱、鎮痛、消炎などの風邪の症状を取り除き、目の充血を抑える作用があり、釣藤散(チョウトウサン)などに配合されます。上品な香気から枕の詰め物に使う場合もあります。
ふむふむ広場や薬用植物区では、クチナシ(アカネ科)がオレンジ色を帯びた果実を実らせています。本種は本州(静岡県以南)・四国・九州・琉球、中国南部、台湾、インドシナ、ヒマラヤに分布し、山地の林縁などに生育します。花はよい香りがすることから人家に植栽されますが、観賞用には八重咲きの園芸品種を用いることが多く、この場合は結実しません。果実には黄色の色素であるクロシンが含まれ、衣類の染料や食品の着色料(クチナシ色素)として利用されます。本種の果実を、ときに湯通しまたは蒸したのちに乾燥させたものを山梔子(サンシシ、真ん中の写真)と呼びます。胆汁の分泌促進や消炎鎮痛作用があり、山梔子が配合された茵陳蒿湯(インチンコウトウ)はじんましんによる全身のかゆみや口内炎などに用います。
薬用植物区では、ゴシュユが赤い未熟な果実を枝の先端につけています。中国原産で、江戸時代に薬用として小石川御薬園(現在の小石川植物園)に導入され、その後各地で栽培されたものが逸出し野生化しています。本種は雌雄異株(雌株と雄株がある)ですが、日本に持ち込まれたのは雌株で、株分けで全国に広がったために日本には雌株しかないといわれています。ゴシュユの未熟な果実を乾燥させたものを呉茱萸(ゴシュユ、右の写真)と呼び、大変強い臭いがあります。体を温める作用や鎮痛、制吐作用があり、冷えの改善や習慣性頭痛の治療に用いる呉茱萸湯(ゴシュユトウ)に配合されます。
広報課ガイド担当 西村佳明
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今週の見ごろの植物
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