食虫植物展が始まります(7/17更新)

今週の見ごろの植物

毎週、園内を巡回しておとどけします。

高松地方気象台は12日、四国地方で「梅雨明けしたとみられる」と発表しました。梅雨明けから連日猛暑が続いていますが、園内ではスイレンの園芸品種やハマボウ、タキユリなどが夏の暑さに負けずに美しい花を咲かせています。園内散策の際は適宜休憩をとったり、水分をこまめにとったりしながら、熱中症対策に努めて花の観察をお楽しみください。

さて、牧野植物園では明日18日から8月30日まで、南園・温室を会場に「食虫植物展」を開催します。

食虫植物展

会 期 :令和8年7月18日(土)~8月30日(日)
会 場 :南園・温室

およそ50種類、100株の食虫植物を展示。わかりやすい解説パネルで夏休みの自由研究にもおすすめです。

栄養の少ない過酷な環境下で生き抜くため、色々なワナを仕掛けて虫を捕え、自身の栄養にする食虫植物。
虫を挟み込んで捕まえるハエトリグサや、穴に落として捕まえるサラセニアやウツボカズラの仲間などさまざまな食虫植物およそ50種類、100株を展示し、その生態と多様性をご紹介します。
どのように虫を捕え消化するのか、またどんな種類があるのかをお子さまにもわかりやすく実物展示とパネルを用いて詳しく解説し、夏休みの自由研究の参考にもなる内容となっています。

今週のブログは食虫植物展の開催に先立ち、展示する食虫植物のなかからピックアップしてその生態や特徴をご紹介します。

ハエトリグサ(モウセンゴケ科)
温室にて7/17撮影

食虫植物といえば本種を一番目にイメージする人も多いのではないでしょうか。1760年、アメリカの東海岸にあるノースカロライナ州で発見された一属一種の食虫植物で、ノースカロライナ州からサウスカロライナ州にかけての限られた範囲の湿地に分布します。

捕虫葉の内側には感覚毛があり、虫を捕まるためのセンサーの役割がある
感覚毛に2回触れると捕虫葉を素早く閉じて虫を捕らえる

葉は平らな葉柄と両手を閉じ合わせるような形の葉身(捕虫葉)からなります。どうやって虫を感知するかというと、その秘密はセンサーの役割をする感覚毛。捕虫葉の内側には感覚毛が3本ずつ生えていて、虫が2回触れた途端、約0.5秒の速さで閉じて捕らえます。1回ではなく、2回というあたり、誤作動を防いで確実に虫を捕まえるための執念のようなものを感じます。捕らえた捕虫葉からは消化液を分泌し、7~10日ほどかけて分解・吸収、ハエトリグサの栄養になります。

そのフシギな生態は人々を惹きつけ、自生地では園芸目的の盗掘が横行し、絶滅が危惧されています。本種はワシントン条約(CITES)の附属書II類に指定されており、国際取引が厳しく制限されているほか、自生地のノースカロライナ州では本種の盗掘は重罪(H級重罪)とされ、窃盗や詐欺などと同列で厳しく扱われます。

ハエトリグサの園芸品種‘マイクロデント’
ハエトリグサの園芸品種‘ロイヤル・レッド’

捕虫葉に変化のあるさまざまな園芸品種がアメリカを中心に作出されており、園芸店などではあまり出回らない、変わった形の捕虫葉を持つものや、赤味の強いものなどを紹介しているので注目してください。

捕虫葉を閉じる動作はエネルギーをかなり消耗するらしく、弱ってしまう原因になるので捕虫葉には決して触れず、観察だけに留めてくださいね。

ネペンテス・ラフレシアナ(ウツボカズラ科)とその仲間
温室にて7/10撮影

ウツボカズラの仲間は葉の一部が虫を捕まえる袋(捕虫嚢:ほちゅうのう)に変化し、落とし穴のように虫などを落として捕らえることで自身の栄養にします。その名の由来は捕虫嚢の形が矢を携帯する筒状の容器である「靭(うつぼ)」に似ていて、つる植物であることから。約170種が東南アジアを中心に分布し、特にインドネシアのボルネオ島やスマトラ島では多くの種が自生しています。その中でもネペンテス・ラフレシアナは日本に最初に導入されたウツボカズラの仲間で、和名のウツボカズラは正確には、ネペンテス・ラフレシアナのみを指します。

温室では園芸品種を含めると10種程度のウツボカズラの仲間を展示しています。

ウツボカズラの仲間の捕虫嚢(ネペンテス・アルボマルギナタ)
ウツボカズラの仲間の捕虫嚢(ネペンテス・ラフレシアナの下位捕虫嚢)

葉に見える部分は葉柄(ようへい)に相当し、つる状に伸びた先に葉身(ようしん)に相当する捕虫嚢ができます。捕虫嚢には虫などを誘引し、捕らえ、捕らえた獲物を逃がさないためのさまざまな工夫が詰まっており、その特異な生態は人々を惹きつけてやみません。

捕虫嚢の開口部の上部についた蓋(ふた)は雨を入りにくくするほか、裏面には蜜線があって虫を引き寄せます。側面(腹側)にある発達した二列の翼(よく)はひれ状で、蜜線の香りに誘われた虫が捕虫嚢をよじ登るのに適すると考えられています。上部まで登った虫は、つるつるした襟(えり)に足を滑らせて開口部に落ち、袋にたまった消化液でおぼれてしまうという寸法です。虫は登って脱出しようと内側の壁に足を掛けますが、壁には鱗片というウロコのようなものがついており、足をかけてもそれが剥がれ落ちることから脱出は困難です。

ネペンテス・ラフレシアナは上位捕虫嚢と下位捕虫嚢の異なる2つの捕虫嚢をつける

ウツボカズラの仲間には上位捕虫嚢と下位捕虫嚢という、つるの上部で空中につくか、下部の地面に接するかで、捕虫嚢の姿が変わる種類があります。紹介したネペンテス・ラフレシアナも2つの異なる捕虫嚢をつけているので観察してみてください。同じ株で異なる捕虫嚢をつけるのは捕まえる虫の違いによると考えられています。

下位捕虫嚢:地表のアリ、甲虫、ゴキブリなど
上位捕虫嚢:翅があり空が飛べる昆虫(ハエ、ガ、ハチなど)

そのため、上位捕虫嚢では翼が消失したり、捕虫嚢が細長くなったり、開口部の向きが変わったりと、見た目の違いが生じます。

ネペンテス・トルンカタ
ネペンテス・アンプラリア

温室にはほかにも、30cm以上にもなる捕虫嚢で、虫だけでなくネズミなどの小動物を捕らえることがあるネペンテス・トルンカタや、面的に広がる捕虫嚢で落ち葉を取り込んで栄養にするネペンテス・アンプラリアなど、当園の貴重なコレクションが楽しめます。

コモウセンゴケ(モウセンゴケ科)
温室にて7/17撮影
コモウセンゴケの粘液のネバネバ具合

モウセンゴケの仲間は葉に多数の腺毛が生え、その腺毛から粘着性の高い液を出すことで触れた虫を捕まえます。世界に約250種類が知られており、オーストラリア、南米、アフリカを中心に、日本にもモウセンゴケコモウセンゴケイシモチソウなど9種が分布しています。

蕾のようす 本種は淡紅色の一日花を咲かせる
高知県内の自生地(崩落地) 植物体は小形でよく群生する

このうちコモウセンゴケは宮城県以南に自生し、山のふもとや原野などの湿った日の当たる場所に生えます。本種は淡紅色の一日花を午前中に咲かせ始めるので、昼前くらいまでにお越しになれば花もご覧いただけるかもしれません。多くの府県で絶滅危惧種に指定されており、ここ高知県では準絶滅危惧(NT)に指定されています(高知県レッドデータブック2022)。

食虫植物展期間中は下記のとおり当日受付先着順のサイドイベントもあるので要チェックです。夏休みはぜひ牧野植物園にお越しください。

食虫植物のふしぎ体験

ハエトリグサが葉を閉じて獲物を捕えるようすを観察できます。※参加費無料

開催日時:7月26日(日)、8月22日(土) 
時 間 :13:30~15:30(1組10分)
参加数 :1組4名まで(計12回×2ブース)
場 所 :植物研究交流センター キッズラボ
申込  :当日受付。先着順、13:00~当日キッズラボ前にて整理券を配布

広報課 西村佳明