【5/16】見ごろの植物を更新しました
本日、九州南部が例年よりもかなり早い梅雨入りをしましたが、園内でもヤマアジサイの仲間が咲き始め、植物も梅雨入り間近を感じているのかもしれません。週末は天気がすぐれないので、長靴をはいて、レインコートや大きめの傘を持ってご来園ください。それでは、今週の見ごろの植物をご紹介します。
見ごろの状況
ケシ(ケシ科)…★☆☆ 二番花や三番花が咲いており、そろそろ終わりです。
アヤメの仲間(アヤメ科)…★★★ アヤメや
カキツバタは見ごろです。
ノハナショウブはこれから。
ガンゼキラン(ラン科)…☆☆☆ まだつぼみです。

今週の見ごろの植物
What’s in Bloom

毎週、園内を巡回しておとどけします。



南園の石灰岩植生園から結網山へ登り始めると右側に点在して生えています。和名の由来は諸説あり、群れて咲く様子が「群ら咲き」であるからとも、染め物に使うと紫色になるからとも。本種の根には表皮を中心にシコニンやアセチルシコニンという色素を含み、本種の根を染め物に用いると鮮やかな紫色を呈します。能力ある人材を役人に登用するための身分制度である『冠位十二階』の中では最高位に与えられる色として、古くは飛鳥時代より特別視されてきました。また、本種の十分に育った根を掘りあげて乾燥させたものを生薬名:紫根(しこん)と呼び、炎症を抑えることから紫雲膏(しうんこう)という軟膏剤にして用いられます。まさに有用植物である本種ですが、自生地である草原の開発や盗掘などによって全国各地で絶滅が危惧され、環境省レッドリスト(2020)では絶滅危惧IB類(EN)に指定されています。


回廊を降り切った先、展示館に入るところの石畳でご覧いただけます。花はガクが変化して形作られていて花びらはありません。良い香りで有名なジンチョウゲの仲間で、本種もよい香りがするのでぜひ顔を近づけて香りを楽しんでみてください。本種の樹皮は大変強靭で、奈良時代から製紙原料として用いられてきました。本種の樹皮を用いた高級和紙である『雁皮紙(がんぴし)』は強靭でありながら滑らかで光沢があって美しく、虫害に強く変色しにくいなど見た目だけでなく耐久性が高いことでも知られています。しかしながら本種は栽培が難しく、原料の多くを自生のものに頼らざるを得ないこと、また製造にも手間がかかるため、現在ではわずかしか生産されていません。


松本満夫氏と西村の栽培品での比較
正門から入った先、土佐の植物生態園での植栽や、本館ウッドデッキから回廊へ階段を降りた先の鉢展示でご覧いただけます。牧野富太郎博士が1895(明治28)年、出身地である高知県佐川町で採集した標本をもとに「植物学雑志」で新種として発表しました。長らく高知県の固有種と考えられていましたが、徳島県と愛媛県でも自生地が見つかっています。本種は現・九州大学の高橋博士らの遺伝子解析研究により、高知県東部で見られるトサノアオイと、宮崎県に分布するオナガカンアオイの自然交雑による雑種起源の種であることが明らかとなっています。花を比較してみると、ガク片の長さやガク片の先の形状、ガク筒入口のしわの入り方など、サカワサイシンは両種の中間的な形態をしているようにも思えてきます。
トサノアオイは回廊からこんこん山広場へ向かう入り口付近に植栽されており、こちらもただいま見ごろです。ぜひサカワサイシンの花と比較してみてください。
広報・ガイド班長 西村 佳明
マークの植物名をクリックすると植栽場所や詳しい説明がご覧いただけます。
今週の見ごろの植物
今週の見ごろマップ

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