【7/25】見ごろの植物(ビロードムラサキ、ヒオウギ、ウツボカズラの仲間)を更新しました

蒸し暑い園内ですが、夏にも負けずに多くの植物が花を咲かせています。水分・塩分の補給を忘れずに園内散策をしてみませんか。本館や展示館など冷房が効いた屋内での休憩もお忘れなく。

南園・温室では8月31日(日)まで食虫植物展を開催中です。今週も園内で見ごろとなっている植物をご紹介します。

今週の見ごろの植物

毎週、園内を巡回しておとどけします。

ミソハギ(ミソハギ科)
オオキツネノカミソリ(ヒガンバナ科)
キセワタ(シソ科)
ガマ(ガマ科)
ヒオウギ(アヤメ科)
ネペンテス・トルンカタ(ウツボカズラ)
オジギソウ(マメ科)

植物に興味を持って調べていると、それらを食べるチョウの幼虫や、花の受粉を助ける昆虫など、植物にかかわりを持つ動物にも興味が沸いてきます。7/24の園内ではチョウの仲間がたくさん飛び回っていて、そちらを観察するのも楽しかったです。追いかけずにゆっくり近づくと案外逃げずに撮影させてくれます。園内の動植物の採集はNGなので撮影だけに留めておいてくださいね。

コオニユリを吸蜜するツマグロヒョウモンのメス(7/24撮影)
オオモミジの幹で休むスミナガシ(7/24撮影)
イヌビワに産卵するイシガケチョウのメス(7/24撮影)

ビロードムラサキ(シソ科) Callicarpa kochiana Makino

初夏に淡紫色の花を咲かせる(7/24撮影)。
葉の裏には星状毛が密生し、触感がビロードのよう(7/24撮影)。
12~1月ごろに白色の果実をつける。

こんこん山広場や、回廊、連絡道、南園など園内各所で花を咲かせ始めました。本種は紀伊半島、四国(南部)、九州のほか、国外では台湾、中国南部、ベトナムに分布し、暖地の林内に見られる常緑低木です。高知県内では東部(室戸岬周辺)と中部(高知市)を中心に比較的多くみられるものの、県外ではまれで、例えば三重県と徳島県では絶滅危惧IA類(CR)、熊本県では絶滅危惧IB類(EN)、鹿児島県では絶滅危惧II類(VU)に、環境省レッドリスト(2020)では絶滅危惧Ⅱ類(VU)にそれぞれ指定されています。本種は牧野博士や当園がある五台山にゆかりのある植物で、博士と吉永虎馬氏が五台山で採集した標本などを基に大正3(1914)年に新種として発表しました。牧野博士は「五台山に生ずるビロウドムラサキの材料が慾しく(中略)これを新聞紙でぐる巻きにして御送り下さいませんでせうか」と高知在住・武井近三郎へたびたび依頼したようです。

淡紫色の花を愛でた後は、葉にもそっと触れてみてください。葉の裏には星状毛が密生し、触り心地はまるでビロード(ベルベット)のよう。大柄な見た目からは想像できないかもしれませんが、本種はムラサキシキブ(という名で流通しているものの多くはコムラサキ)に近縁で、和名はビロードの質感のような葉をもつことに因ります。

ヒオウギ(アヤメ科) Iris domestica (L.) Goldblatt et Mabb.

花は6枚の花被片が平開する。花被片は橙赤色で内側に紅色の斑点がある。
剣状の葉は扇状に2列に並ぶ。
果実は蒴果で、果実が裂開すると光沢のある種子が顔を出す。
種子はぬばたま、うばたまと呼び、万葉集では枕詞として使われている。

こんこん山広場や連絡道などでご覧いただけます。本種は本州から琉球のほか、国外では朝鮮、中国からインドにかけて分布し、山地の草原に生育します。本種はアヤメやノハナショウブ、カキツバタなどと同じアヤメ属(Iris)に属しますが、日本に自生するものでは唯一、本種のみ花被片がすべて同じ形をしています(その他多くのアヤメ属に見られる花の基本形はこちらを参照)。鮮やかな橙赤色の花は平開し、草原で目立ちます。和名の由来は、剣状の葉が扇状につく様子を宮中で用いられたヒノキ製の扇=檜扇に見立てたことに因ります。本種の花は咲いたその日のうちにしぼんでしまう一日花で比較的短命ですが、つぼみが次々開花し楽しませてくれます。

ウツボカズラの仲間 Nepenthes spp.

ネペンテス・ラフレシアナ
ネペンテス・アンプラリア
ネペンテス・トルンカタ

南園・温室では8月31日(日)まで食虫植物展を開催中です。それらの中からウツボカズラの仲間をご紹介します。この仲間は葉の一部が虫を捕まえる袋(捕虫嚢:ほちゅうのう)に変化し、落とし穴のように虫などを落として捕らえることで自身の栄養にします。その名の由来は捕虫嚢の形が矢を携帯する筒状の容器である「靭(うつぼ)」に似ていて、つる植物であることから。約170種が東南アジアを中心に分布し、特にインドネシアのボルネオ島やスマトラ島では多くの種が自生しています。

葉柄と葉身に相当する部分(ネペンテス・ラフレシアナ)※比較はコブシ
捕虫嚢の各部名称(ネペンテス・ラフレシアナの下位捕虫嚢)
ネペンテス・トルンカタの捕虫嚢に運悪く落下したワモンゴキブリ

ウツボカズラは葉に見える部分(葉柄に相当)からつる状のものが伸び、その先に捕虫嚢(葉身に相当)ができます。捕虫嚢には虫などを誘引し、捕らえ、捕らえた獲物を逃がさないためのさまざまな工夫が詰まっており、その特異な生態は人々を惹きつけてやみません。捕虫嚢の開口部の上部についた蓋(ふた)は雨を入りにくくするほか、裏面には蜜線があって虫を引き寄せます。側面(腹側)にある発達した二列の翼はひれ状で先が毛状となり、蜜線の香りに誘われた虫が捕虫嚢をよじ登るのに適すると考えられています。上部まで登った虫は、つるつるした襟(えり)に足を滑らせて開口部に落ち、袋にたまった消化液でおぼれてしまうという寸法です。虫は登って脱出しようと内側の壁に足を掛けますが、壁には鱗片というウロコのようなものがついており、足をかけてもそれが剥がれ落ちることから脱出は困難です。

雌花:ネペンテス・トルンカタ
雄花:ネペンテス‘ルイーザ’

7/24現在、ネペンテス・トルンカタネペンテス‘ルイーザ’などで開花が見られます。この仲間は多くの動物や我々人間のようにメスとオスがあり(雌雄異株:しゆういしゅ)、咲かせる花は株によって雌花か雄花のどちらかです。虫に花粉を運んでもらうようですが、生育にも繁殖にも虫の存在は欠かせないようです。

広報・ガイド班長 西村 佳明

マークの植物名をクリックすると植栽場所や詳しい説明がご覧いただけます。

今週の見ごろの植物

モウセンゴケ(モウセンゴケ科)
ネペンテス・トルンカタ(ウツボカズラ科)
タヌキモ(タヌキモ科)
コオニユリ(ユリ科)
オグラセンノウ(ナデシコ科)
フウリンブッソウゲ(アオイ科)
ミソハギ(ミソハギ科)
ヒオウギ(アヤメ科)
ハエトリグサ(モウセンゴケ科)
テバコマンテマ(ナデシコ科)
タキユリ(ユリ科)
サルスベリ(ミソハギ科)
コガネバナ(シソ科)
キセワタ(シソ科)
オジギソウ(マメ科)
オオキツネノカミソリ(ヒガンバナ科)

今週の見ごろマップ

「見ごろ植物マップ&フォト」過去1年分もダウンロードできます。「見ごろカレンダー」のページで確認してみてください

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