【8/8】見ごろの植物(ヤマモガシ、ナツズイセン、ヒナシャジン)を更新しました
蒸し暑い園内ですが、夏にも負けずに多くの植物が花を咲かせています。水分・塩分の補給を忘れずに園内散策をしてみませんか。本館や展示館など冷房が効いた屋内での休憩もお忘れなく。
南園・温室では8月31日(日)まで食虫植物展を開催中です。それでは今週も園内で見ごろとなっている植物をご紹介します。

今週の見ごろの植物
What’s in Bloom

毎週、園内を巡回しておとどけします。
ヤマモガシ(ヤマモガシ科) Helicia cochinchinensis Lour.



こんこん山広場を登っていき、温室を望むウッドデッキのすぐ手前、左側に自生の本種があり、少し見上げると花をご覧いただけます。淡いクリーム色を帯びた白いブラシ状の花(花序)は数日で傷んでしまうのであまり長く楽しむことはできません。8/8現在、つぼみもまだあるので来週半ばくらいまではご覧いただけるのではと期待しています。国内では本州(東海地方以西)、四国、九州、琉球に分布し、暖地の林内に生える常緑高木です。若い木には葉の縁に明瞭な鋭尖きょ歯がありますが、大きく成長するとほとんど全縁になります。美しい蛾であるサツマニシキの食草であり、園内では少し薄暗い場所などで成虫を見ることができますよ。
さて、ヤマモガシ科。あまり聞き覚えのない人も多いかと思います。それもそのはず、本科のうち国内で見られるのは本種のみ(と、含めるとすれば、与那国島で1917年に標本が採集されたあと生育が確認できていないタイワンヤマモガシ)。主にオーストラリア・ニューカレドニア・南アフリカ・南アメリカで見られ、馴染みのあるものでは豪華な花を花材に用いるプロテアの仲間や、バンクシアの仲間、高級なナッツとして食されるマカダミアも本科に含まれます。
ナツズイセン(ヒガンバナ科) Lycoris x squamigera Maxim.



花被片の先端がしばしば青みがかる。
北園の芝生広場を下った先や、南園の結網山のふもとで見ごろです。本種は古い時代に中国から渡来したとされています。花が美しいため観賞用として人家などで栽培され、ときに逸出し、人里などでしばしば野生化しています。早春に伸びた葉は初夏に枯れ、その後、50~70cmの花茎が立って数個の淡紅紫色の花が咲きます。リコリス・ロンギツバ(Lycoris longituba)と
リコリス・スプレンゲリ(L.sprengeri)との雑種起源と考えられており、結実しません。和名は葉がスイセンに似て夏に咲くことに因りますが、スイセンの仲間ではなくヒガンバナの仲間です。片親と推定されているリコリス・スプレンゲリは南園に植栽があり、こちらも間もなく開花するでしょう。
ヒナシャジン(キキョウ科) Adenophora maximowicziana Makino


8/8現在、南園の石灰岩植生園にて見ごろとなっています。高知県と愛媛県の石灰岩地にのみ分布し、岩場や疎林地に生えます。もともと分布が限られる稀少な植物ですが、自生環境の変化や園芸目的による盗掘などによって個体数が減少し、環境省レッドリスト(2020)では絶滅危惧Ⅱ類(VU)に、高知県レッドデータブック(2022)では絶滅危惧IB類(EN)にそれぞれ指定されています。
本種は牧野博士ゆかりの植物で、彼が横倉山で採集した標本をロシアのマキシモヴィッチ博士に送ったところ、A. marsupiflara の変種であるとの回答があり、これに松村任三博士が命名した和名ヒナシャジンをつけて、1890(明治23)年「植物学雑誌」に掲載しました。その後、1892(明治25)年、牧野自身が横倉山で、また吉永悦郷氏が不入山で採集した標本をもとに、新種 A. maximowicziana として発表。この学名は、マキシモヴィッチに献名したものです。和名にあるシャジンは
ツリガネニンジンのことで、その草姿を雛に例えています。本館でも鉢展示が近いうちに行われますのでこちらもお楽しみに。
広報・ガイド班長 西村 佳明
マークの植物名をクリックすると植栽場所や詳しい説明がご覧いただけます。
今週の見ごろの植物
今週の見ごろマップ

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