ガガブタが咲いています(9/5更新)

今週の見ごろの植物

毎週、園内を巡回しておとどけします。

スズムシバナ(キツネノマゴ科)
キノクニスズカケ(オオバコ科)
マルバチシャノキ(ムラサキ科)
センニンソウ(キンポウゲ科)
ウコン(ショウガ科)
サネカズラ(マツブサ科)
ヒメハマナデシコ(ナデシコ科)

ガガブタ(ミツガシワ科) Nymphodes indica (L.)Kuntze

花は白色で中心部は黄色、5つに分かれた裂片のふちは長い毛が密生する。

南園のスイレンがある池(5号池)の東側、道沿いに置いた水がめの中に植えています。園地で公開されているものはこの展示のみなので、花が終わって片づける前にご覧ください。ガガブタは本州から九州のほか、国外では朝鮮半島、中国、東南アジア、アフリカ、オーストラリアなど熱帯から暖帯に広く分布する多年生の水生植物で、池沼に生え、スイレンによく似た円形の葉を水面に浮かべます。花は白色で中心部は黄色、5つに分かれた裂片のふちは長い毛が密生し、愛らしい姿をしています。

本種は異花柱花性、展示株は短花柱花株のようだ。
秋ごろになると葉柄の基部に殖芽が形成される。

同じ種類でも株によってめしべの長さが異なる花を持つことを異花柱花性といい、本種も2つのタイプの花(短花柱花、長花柱花)を持ちますが、花を見るに当園の展示株は短花柱花株(めしべがおしべよりも短いタイプの花をもつ株)のようです。異花柱花性は本種以外にもサクラソウやアカネ科、モクセイ科などで見られ(関連:ミソハギの異花柱花性を紹介した8/1のブログ)、一般に同じタイプ同士の花では結実しにくく、自家受粉を避ける工夫と考えられています。一方で、本種は殖芽による無性生殖も行います。丸い葉を裏返してみると、葉柄の基部にバナナの房のように肥大した殖芽が観察できます。多様な繁殖様式を持つことは生存競争に有利に働きそうですが、そもそも自生環境の池沼は埋め立てられることも多く、環境省レッドリスト(2020)では準絶滅危惧(NT)に、高知県レッドデータブック(2022)では絶滅危惧IA類(CR)にそれぞれ指定され、東京都、神奈川県、福井県、鳥取県では既に絶滅したとされています。

シロバナクズ(マメ科) Pueraria lobata (Wild.) Ohwi f. leucostachya (Honda) Okuyama
花と未熟な果実(豆果)が同時に観察できる。
一部では果実が熟していた。種子は長さ3ミリ程度。
根を刻んで乾燥させたものを葛根(かっこん)とよび、葛根湯などの漢方薬に配合される。
薬用植物区には基本種のクズが観察できる。

本館ウッドデッキ中央の柵を覆うように繁茂しながら、白い花を咲かせています。本種はクズの白花品種で稀に見られます。基本種であるクズは北海道から九州、奄美のほか国外では朝鮮半島、台湾、中国、フィリピン、インドネシア、ニューギニアなどに分布するつる性の多年生草本~半低木で、各地の山野や日当たりのよい場所でふつうに見られます。

当園では6月下旬から7月中旬にかけてと、8月下旬から9月中旬にかけての年2回、開花のピークがあり、現在は未熟な果実と一緒に花を楽しむことができます。マメ科である本種の果実は褐色の粗い毛におおわれており、未熟な果実は中身がない‘スカスカ’の枝豆のように見えます。

その旺盛な成長から土地の保全や緑化を見込んでアメリカに導入されたものは、その後爆発的に増殖してしまい大きな環境問題となっています。その一方で、本種は食用にも薬用にも、さらには工芸品にもなる、有用植物でもあります。根は肥大してデンプンをため込み、それを取り出したものが葛粉(くずこ)で、葛切りや葛餅、葛湯などにして食されるほか、根を刻み乾燥させたものを葛根(かっこん)とよび、風邪の引きはじめに飲む葛根湯(かっこんとう)などの漢方薬に配合されています。私が以前居た静岡県掛川市では繊維を使った葛布(くずふ、かっぷ)とそれを用いた工芸品が有名です。薬用植物区に行くと基本種のクズが赤紫色の花を咲かせていますので、併せて足を運んでみてはいかがでしょうか。

スズムシバナ(キツネノマゴ科) Strobilanthes oligantha Miq.
淡紫色の漏斗状の一日花を咲かせる
土佐の植物生態園には白花もある。
【参考】別名のスズムシソウは同名の種がラン科にある。
写真はスズムシソウに近縁のアキタスズムシソウ(高知県の自生地にて)。

土佐の植物生態園のバクチノキ周辺や回廊の道沿いのほか、芝生広場から降りた先などで淡紫色の漏斗状の花をご覧いただけます(土佐の植物生態園では白花もあります)。本種の花は一日花で午後には傷み始めるため、観察はフレッシュな花がご覧いただける午前中がおすすめです。本種は近畿以西の本州、四国、九州のほか、中国中部に分布し、山地の木陰に生育します。和名はスズムシの鳴く秋ごろに花を咲かせることに由来し、スズムシソウとも呼ばれますが、同名の種がラン科にあるので混同しないよう注意が必要です。

広報・ガイド班長 西村 佳明

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見ごろの植物

2025年9月1週目
リコリス・スプレンゲリ(ヒガンバナ科)
シロスジアマリリス(ヒガンバナ科)
アギナシ(オモダカ科)
フウリンブッソウゲ(アオイ科)
サンタンカ(アカネ科)
ミソハギ(ミソハギ科)
ヒメハマナデシコ(ナデシコ科)
ツリガネニンジン(キキョウ科)
センニンソウ(キンポウゲ科)
スダレギボウシ(クサスギカズラ科)
スズムシバナ(キツネノマゴ科)
スイレン属の園芸品種セントルイスゴールド
シロバナクズ(マメ科)
サネカズラ(マツブサ科)
オミナエシ(スイカズラ科)
ウコン(ショウガ科)

見ごろマップ

2025年9月1週目

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