スイレン属の仲間が暑さに負けずに咲いています(7/31更新)

今週の見ごろの植物
What’s in Bloom

毎週、園内を巡回しておとどけします。
南園の水上観察路や温室、展示館の中庭など園内各所でスイレンの仲間(スイレン科)が花盛りです。
皆さんはお堀や池で咲く黄色やピンク色の花を想像すると思います。世界中の熱帯から温帯にかけて約50種が分布しているとされており、このうち日本には
ヒツジグサのみが自生しています。花が美しいために非常に人気があり、1800年代後半ごろヨーロッパで育種が始まり、その後も欧米を中心に品種改良が進んだ結果、現在では非常に多数の園芸品種があります。
ハスと混同している人もいらっしゃるのではないでしょうか。ハスとスイレンの仲間は一見すると似ていますが、じつは系統的にはかなり離れています。南園の水上観察路では両種が植栽されているので見比べてみませんか。どちらも水辺で暮らすなかで都合が良い姿かたちを採用した結果、似た姿になった(収斂進化)もので、葉や花の高さや葉の形などをよく比べると違いが見えてきます。


スイレンの園芸品種を語るうえで外せないのはフランスの育種家 ジョゼフ・ボリー・ラトゥール=マルリアック(1830-1911)。彼は交配を精力的に行い、それまで白や淡い色が中心だったヨーロッパのスイレンの仲間に黄色やサーモンピンクなど多彩な花色を生み出しました。マルリアックが作出したスイレンの園芸品種は1899年のパリ万博で展示され、画家のクロード・モネが購入したことでも有名。ジヴェルニーの庭のスイレン池は、このマルリアックの品種がきっかけになったとされています。
スイレンの仲間は温帯性スイレンと熱帯性スイレン(寒さに弱い)に大きく分けることができ、花が咲く時間帯も昼咲きと夜咲きがあります。花色の多様さも相まって、個人的に面白いと感じるグループです。当園には在来種の
ヒツジグサや、アフリカ産の原種である
ニムファエア・カエルレア、マルリアックよりもあとの時代にアメリカで作出された
‘セントルイス・ゴールド’ 、
‘コロラド’ 、
‘ミズーリ’ や、タイで作出された‘スター・オブ・サイアム’などの園芸品種がご覧いただけます。

スイレンの仲間の花は外側から萼片、多数の花弁(種類によっては萼片と花弁の見た目が同じで見分けがつかないことも)、多数の雄しべと続き、中央には、多数の心皮が合着してできた柱頭盤があり、そこから放射状に広がる雌しべの柱頭が見られます。花弁は内側に進むにしたがって細くなり、雄しべまで連続的に移行しているように見えます。花の器官が多数あり、それぞれの器官の境界があいまいな特徴は原始的な被子植物らしい特徴が残っていると考えられています。
ヒツジグサ(スイレン科)

ヒツジグサ
温帯性スイレン(原種)
花:昼咲き
分布:日本を含む北半球の温帯域を中心に広く分布
展示館の中庭にある水鉢でご覧いただけます。本種は日本を含む北半球の温帯域を中心に広く分布します。和名の由来は、花が未の刻(午後2時)ごろに咲くことから。牧野博士とのエピソードもあり、当時71歳の牧野博士はヒツジグサが本当に未の刻に開花するのか確かめようと、京都の巨椋池(現在は干拓されて農地)で、早朝5時から午後6時過ぎまで約13時間、地元の小学校の校長先生とともに小舟を浮かべて本種を観察したようです。同行した校長先生は大変だったろうなって、同情してしまいます。
花は3日、開いて閉じるを繰り返すと水の中に沈んでいきます。毎日必ず咲くわけではありませんが、ご覧になりたい方は午後2時ごろ水鉢を覗いてみてください。
ニムファエア・カエルレア(スイレン科)

ニムファエア・カエルレア
熱帯性スイレン(原種)
花:昼咲き
分布:北~中央アフリカ
南園の水上観察路からご覧いただけます。北~中央アフリカに分布する熱帯性スイレンの原種の一つで、ナイルの青いハス(Blue Lotus)ともよばれますが、もちろんハスではなくスイレンの仲間です。昼咲きで、エジプトでは朝に花を開いて夕方に閉じる性質から太陽や再生の象徴とされ、王墓や神殿の壁画には本種を描いたものが数多く残されるほどエジプトの文化的な繋がりが強い植物です。
学名の種小名のカエルレア(caerulea) はラテン語で「青空色」「青色」という意味で、学名そのものが美しい青い花を表しています。
スイレン属の園芸品種‘セントルイス・ゴールド’(スイレン科)

スイレン属の園芸品種‘セントルイス・ゴールド’
熱帯性スイレン(園芸品種)
花:昼咲き
作出:アメリカ(1956年)
N.sulfurea とスイレン属の園芸品種’アフリカン・ゴールド’から作出。花弁が剣状で、鮮やかな黄色が美しいため人気のある園芸品種です。多花性で、多くまとまって咲くので見ごたえがあります。
スイレン属の園芸品種‘レッド・フレア’(スイレン科)

スイレン属の園芸品種‘レッド・フレア’
熱帯性スイレン(園芸品種)
花:夜咲き
作出:アメリカ(1938年)
花は大輪で深紅に近い濃い赤色が目立つ園芸品種です。花は夜咲きで、当園では夏の恒例イベント「夜の植物園」でよくライトアップされるスター植物の一つです。水上観察路では同じく夜咲きの
‘ミズーリ’ や ‘セロン・ピンク’ もあり、これらは午前中の早い時間であればまだ花が開いていることも多いです。






南園の水上観察路ではトンボの仲間にもたくさん出会えます。縄張りのパトロールをしていたり、ペアで産卵していたり、止まって休憩してたり、お食事中だったり。水辺の環境でそれぞれが思い思いに過ごしています(観察にとどめてくださいね)。
帽子と日傘と飲み物を持って、この暑い時期に負けずに美しい花を咲かせるスイレンの仲間をぜひお楽しみください。
広報課 西村佳明

