チョウマメが咲いています(8/21更新)

今週の見ごろの植物
What’s in Bloom

毎週、園内を巡回しておとどけします。
チョウマメの園芸品種(マメ科)


ふむふむ広場のふれあいの庭エリアではチョウマメが暑さをものともせず旺盛につるを伸ばして深青色の花を咲かせています。熱帯アジア原産の多年草で、暑さには強い一方、寒さには非常に弱く、日本では一年草として扱われます。

花は他の多くのマメ科植物と同様に、旗弁、翼弁、竜骨弁からなる蝶形花とよばれる特徴的な花の構造を持っています。本種は非常に大きな旗弁を持ちます。旗弁はマメ科の多くの種では通常、上側に位置しますが、本種では花がくるっと反転したような向きにつくため、旗弁は下向きになります。大きな旗弁が下向きにあることで、訪花昆虫がそこにとまって花の内部へ入りやすい構造になっています。大きな旗弁や翼弁の基部は爪状に細くなっており、訪花昆虫が花の内部へ体をねじ込むと、花弁が動きます。その動きによって竜骨弁に包まれていた雄しべと雌しべが露出し、昆虫の体に接触することで受粉を促します。雄しべは10本あり、うち9本は基部から中ほどまで合着して丈夫なさや状(雄しべ筒)になっており、雌しべは雄しべ筒に包まれます。
さて、花の深い青色の正体はテルナチン類を主としたアントシアニン系色素で、無味無臭でほかの食材の邪魔をしないことから東南アジアでは昔から食品に利用されており、お米を青く染めたマレーシアの料理「ナシ・クラブ(Nasi Kerabu)」は有名です。また、花を湯に浸すとできる鮮やかな青色のハーブティーは、華やかな見た目から近年人気があります。このハーブティーの青色は、レモン果汁を絞って入れるとたちまち紫色や赤紫色へと変化するのはご存じでしょうか。なぜ、同じ花から取り出した色が、こんなにも劇的に変わるのでしょうか。その答えはチョウマメの花に含まれるアントシアニン系色素と、溶液のpH(酸性・アルカリ性の度合い)が関係します。
キッズラボで実験をしてみました。
〇用意するもの
・熱湯400ccが入った鍋(今回はビーカーを使用)
・チョウマメの花(乾燥も可)8輪
・クエン酸
・透明なコップ3-4個(今回は試験管を使用)
チョウマメの花を熱湯に浸すと、綺麗な水色の色素(アントシアニン系色素)が抽出できます。


何も入れていない水色の色水を「対照区」として、別の色水へクエン酸を少しずつ加えてみました。

すると、クエン酸を入れる量に応じて紫色やピンク色へと変化しました。クエン酸はレモンや梅干しなどに含まれる酸味を感じる成分で、水に溶かすと酸性になる性質があります。アントシアニン系色素の多くは(植物の種類によって程度はさまざまですが)pHが変わることで分子構造が変化し、見える色が変わる性質があります。小学校高学年の理科の教科書で定番のムラサキキャベツのしぼり汁を使った実験を思い出した方もいらっしゃるかもしれませんね。チョウマメの花の場合はクエン酸の量を増やして酸性に傾くほどより鮮やかなピンク色に近づくことがわかりました。同時に、酸性の変化にかなり敏感なようなので、家で実験を行うのであればクエン酸を加える際はごく少量ずつ足してみてください。
ノシラン(クサスギカズラ科)

南園の牧野博士像から奥に進み、
タイサンボクや
ヤクシマアジサイのあたりに植栽があります。本種は本州(東海地方以西)・四国・九州・琉球、済州島に分布する多年草で、海に近い林下に生えます。日陰に強く強健なため、庭などにもよく植栽されます。


花茎は扁平で短い翼があり、その先につく花序の重さで弓なりに曲がります。花は白色で、各節にある苞の腋部からそれぞれ3-8個の花をつけます。
ここからは切り口を変えて、本種の学名にまつわる物語をご紹介。現在、広く支持されるノシランの学名は Ophiopogon jaburan です。jaburan の j は、英語の「ジャ」のような音ではなく、ラテン語ではヤ行に近い音を表します。そのため、学名は「オピオポゴン・ヤブラン」と読むことができます。……あれ? ヤブラン?
ノシランの学名(の種小名)には、別の植物であるヤブランの和名が使われているように見えるのです。このあべこべに感じる学名には、シーボルトが深く関わっています。長崎・出島のオランダ商館医として日本の植物を精力的に収集・研究したフィリップ・フランツ・フォン・シーボルトは、1830年にノシランを Slateria jaburan と記録しました※ただし、裸名(Siebold, Verh. Batav. Genootsch. Kunsten 12: 15, 1830)。このとき、和名として 「Noshi-ran; Jaburan」 という2つの名称を記しています。つまりシーボルトは、この植物について「ノシラン」と「ヤブラン」という2つの名称を記録していたことになります。ではなぜ、シーボルトはノシランにjaburanという種小名をつけたのでしょうか。
私たちが認識しているヤブランは、ノシランとは別の植物です。現在の分類では、ノシランはジャノヒゲ属(Ophiopogon)、ヤブランはヤブラン属 (Liriope) に分類されています。シーボルトが日本人から本種の名前を聞き取った際、地域や人によって異なる呼び名を聞いた可能性もあります。また、当時の日本で「ヤブラン」という名前が指す植物そのものが違っていた可能性や、近縁種を含めた総称であった可能性も考えられます。
残念ながら、なぜ jaburan という名前がノシランの種小名として選ばれたのか、その詳しい経緯はよく分かりませんでした。その後、分類の見直しによって属がSlateriaからOphiopogonに変更され、現在の Ophiopogon jaburan となりました。
植物の学名は、一見すると取っつきにくいアルファベットの羅列に見えます。しかし、その一つの名前をたどっていくと、植物を採集した人、その種類の特徴、地名や人名、当時使われていた呼び名、そして分類学者たちによる長い議論の歴史が見えてきます。園内の解説ラベルには和名や解説文とともに学名があります。学名にまつわる物語にも注目いただくと、植物の世界にさらに深くハマっていきます。
広報課 西村佳明

