オオモクゲンジが咲いています(8/28更新)

今週の見ごろの植物
What’s in Bloom

毎週、園内を巡回しておとどけします。
オオモクゲンジ(ムクロジ科)

北園の芝生広場を薬用植物区側へぐるっと回って、
ホウショウのあたりから左へスロープを降りていく途中、右側に本種の大きな木があります。本種は中国、ベトナムに分布し、高さ20mに達する落葉高木で、日本では公園や寺院などに植栽されます。枝先に大きな円錐花序をつけ、多数の黄色の花を咲かせますが、ぐっと見上げないと気づかないため素通りされることが多く、職員もじっくり観察している人は少ないと思います。観察の際は、株元から一段下がった開けたところに枝垂れた枝があるので、そちらを観察すると花の細部を確認しやすいです。

本種は雌雄同株異花(しゆうどうしゅいか)といって、大きな円錐花序の中に雄花と雌花を咲かせます。これは
ムクロジも同様です。遠目にも鮮やかな黄色が美しい花序ですが、花序を構成する雄花と雌花に注目するとなかなか芸が細かいことに気づきます。雄花も雌花も花弁は本来5枚ですが、うち1枚は退化していて、見た目は4枚です。雄花では、本来5枚目の花弁が配置される位置を埋めるように、雄しべの花糸がせり出して湾曲します。


雄しべは8本で、雄花では花冠から飛び出すほど伸長しますが、雌花では雄しべは発達せず伸長しません。雌しべは1本で雄花では痕跡的に退化しています。花序をじっくり観察すると所どころに赤い模様がありますが、これは雄花の花弁につく付属体で、花弁が外側に折り返したところに2裂して発達します。付属体は花の咲き始めは淡いオレンジ色で、花が咲き進むにつれ色が濃くなって赤色になるようです。雄花はぽろぽろとすぐ落花するので足元にも注目です。

花後はピンク~赤褐色の袋状の果実(蒴果)ができ、風船のようでそちらも可愛らしいです。落花も早く見ごろはそこまで長くないのでこの週末にでもぜひ花を観察してみませんか。
ヘビウリ(ウリ科)


ふむふむ広場のパーゴラにはヘチマやトカドヘチマとともにヘビウリが植栽されています。8/28現在、鮮やかなオレンジ色の完熟した果実や、繊細な見た目の白色の花がご覧いただけます。夜の植物園でのスター植物の一つである夜咲きの
カラスウリと同属で、本種もカラスウリ属の多くに見られる、花弁の縁に生じるレース状の毛状突起があります。本種はカラスウリと違って日中に咲くので観察しやすく、ぜひその繊細な花を鮮やかな果実とともに見ていただきたいです。

本種の花は2種類あり、先のオオモクゲンジと同様、本種も雌雄同株異花です。つまり、雄花と雌花がありますが、よく似ています。見分けるには花の基部にある子房の有無を確認するのが手っ取り早いです。また、雄花も雌花も葉腋から生じますが、雄花は複数咲くのに対し、雌花は単生します。

またまた解剖してみました。雄花には3本が合着し見た目が1本の雄しべが、雌花には雌しべが1本あって、子房のふくらみがありました。子房の断面には将来種子になる胚珠も確認できます。雄花も雌花も筒状になって蜜を溜める構造をしており、これを求めて訪れるチョウなどによって受粉すると考えられます。
その繊細な花と鮮やかな果実をぜひご覧ください。
マツムシソウ(スイカズラ科)

土佐の植物生態園と展示館周辺では、マツムシソウが咲き始めました。本種は北海道~九州に分布する、日本固有の越年草で、日当たりのよい草原や山地に生え、ここ高知県では中部の蛇紋岩地にのみ生育します。和名の由来はマツムシの鳴くころに花を咲かせることに由来します。
本種の頭花(頭状花序)を構成する一つ一つの花をよく見ると、頭花の周囲にある花では花冠の裂片のうち3裂が大きく発達しているのに対し、頭花の内部にある花は4裂し、周囲の花と比べると小さくなっています。このように、頭花の周囲にある花が特に大きく目立つ構造は、花序全体が「一つの大きな花のように」振る舞って訪花昆虫を誘引するための興味深い特徴です。
さて、本種は多くの府県で絶滅が危惧されており、高知県レッドデータブック(2022)では絶滅危惧ⅠA類 (CR)に指定される希少種でもあります。なぜ多くの地域で絶滅が危惧されているのでしょうか。その原因の一つとして考えられるのは「遷移(せんい)」による生育環境の悪化です。
本種は一回結実性で、結実後は枯死します。先にも述べたとおり、本種は日当たりのよい草原や山地を好みますが、それは発芽したばかりの子(実生)も同じ。本種が安定的に子孫を残して繁栄するためには、親株が枯れた後にも種子が発芽し、実生が成長できるような明るい環境が必要です。一方で、日本は温暖で雨も多く、草原はそのままにしておくとやがて低木や樹木が侵入して森林へと変わり、本種の好む環境ではなくなります(この移ろいを遷移といいます)。
日本ではかつて、かやぶき屋根に利用するススキを刈り取る採草地や、家畜の飼料を得るための草地、定期的な火入れによって維持されてきた草原など、人の営みによって多くの草原が維持されていました。近代以降、ライフスタイルの変化によって人と草原との関わりが薄れていくとともに、多くの草原は姿を消し、本種のような草原に依存した植物は数を減らしています。
希少な植物を保護するとき、「ありのままの自然を残すこと」が正解だと思われがちですが、必ずしもそうではありません。人が働きかけることで守ることができる植物や自然もあります。マツムシソウはその一例です。植物そのものだけでなく、草原という環境と、そこを生み出してきた人との関わりまで含めて考えることも、植物の保全を考えるうえで重要なテーマの一つです。
広報課 西村佳明

