ハガクレツリフネが咲いています(9/18更新)

今週の見ごろの植物
What’s in Bloom

毎週、園内を巡回しておとどけします。
ハガクレツリフネ(ツリフネソウ科)


正門から土佐の植物生態園に進み、2番目の角を左に折れる手前、右側に植栽があります。和名は花が葉に隠れるように咲くことに因ります。牧野博士は1911年、土佐・奥菜ノ川(現在の仁淀川町名野川の一部地域)などで採集された標本を基に、「植物学雑誌」25巻293号で学名 Impatiens hypophylla Makinoとして発表しました。種小名のhypophyllaは「葉の下」を意味し、和名と学名のとおり、葉腋から花序柄が伸び、その葉の裏側で花が咲くため、真上からだと花に気づきにくいです。
本種は日本固有種で、紀伊半島から四国、九州に分布し、山地の林内や林縁の湿ったところに生える一年草です。
ところで、みなさんは「ソハヤキ要素」という言葉を聞いたことはありますか?本種のように、紀伊半島から四国、九州の主に太平洋側に共通して分布する植物を「ソハヤキ要素(の植物)」といいます。漢字で「襲速紀」と書き、南九州の古名「襲」、豊予海峡の「速吸瀬戸」、紀伊半島の「紀伊」に由来し、現在は海で隔てられたこれらの地域に共通する植物が見られることから、植物地理学では特徴的な分布域として知られています。


ツリフネソウの仲間には小学生が学習教材として栽培するホウセンカや、インパチェンスの名で流通するアフリカホウセンカなどのほか、高知県ではハガクレツリフネ、キツリフネ、ツリフネソウの3種が自生します。うち、当園では南園のお馬路沿いに
ツリフネソウが赤紫色の花を咲かせています。土佐の植物生態園のハガクレツリフネと見比べてみてはいかがでしょう。




日本に分布するツリフネソウの仲間はその名のとおり、船をつり下げたように見える花の形が特徴的です。花の開口部を覗いてみると、5本の雄しべと1本の雌しべがあります。咲き始めは5本の雄しべが雌しべを包むようにまとまり、まず雄しべが成熟します(雄性期)。その後、咲き進むにつれて雌しべが成熟しますが、その挙動は種によって異なります。ハガクレツリフネは雄しべが完全に脱落し、雌しべのみとなる(雌性期)へ移るのに対し、ツリフネソウでは雄しべが脱落せず、成熟した雌しべと共存します(両性期)。

ツリフネソウを分解してみました。後方へ伸びる細長い袋状の距の内部には蜜が蓄えられ、訪花昆虫が口吻を突っ込むことで花粉を運んでもらいます。萼は3枚あり、そのうち1枚が発達して距を形成します。花弁は5枚ありますが、左右それぞれ2枚が合着して側花弁を形成するため、見た目は3枚に見えます。
ツリフネソウの仲間は世界で900種類以上が知られており、側花弁と距の形態は種によって著しく多様化を遂げ、さながらラン科の花のようです。花をじっくり覗いてみると、普段は気づかない花の巧みなつくりが見えてきます。この機会にぜひゆっくり観察してみてください。
ナガバノコウヤボウキ(キク科)

土佐の植物生態園のハガクレツリフネの道向かいと、その先、最後の角の左手の2か所で見ごろです。本種は本州(東北地方南部)・四国・九州、中国中部に分布し、やや乾燥した明るい雑木林などに生えます。ここ高知県内では蛇紋岩地や石灰岩地の疎林内などでよく見られます。近縁種の
コウヤボウキとともに、日本に生育するキク科植物では珍しく、木本(落葉小低木)です。
コウヤボウキの名は高野山でこの枝を束ねて箒(ほうき)にしたことに因り、高野山では屋内の清掃にコウヤボウキやナガバノコウヤボウキを束ねた箒を使ってきました。箒として利用されてきた歴史は古く、東大寺の正倉院には「子日目利箒(ねのひのめとぎぼうき)」が現存しています。
ナガバノコウヤボウキの花は白色の頭花で2年枝に単生します。頭花は他の多くのキク科植物と比べると特徴的で、舌状花はなく数個の筒状花からなります。一つ一つの筒状花の花冠は先端が5裂し、フリル状に広がり、小さいながらも華やかな見た目です。
本種はコウヤボウキよりも葉が長いことから「ナガバノコウヤボウキ」と名づけられていますが、葉の形だけ見るとじつはそうとも言い切れないのが面白いところで……
ナガバノコウヤボウキの当年枝(1年目の枝)の葉は、卵形~広卵形で丸みがありがち。そしてコウヤボウキの2年枝は、細長い葉をつけがちなため、葉だけを見ると両種は似ていることがあります。区別がつかないときは、葉に光をかざしてみたり鋸歯を観察したりすると、両種を見分ける手がかりになります。


コウヤボウキでは側脈まで白くはっきりと見えるのに対し、ナガバノコウヤボウキでは葉脈が目立ちません。また、鋸歯にも違いがあり、コウヤボウキでは葉の縁にまばらにつくのに対し、ナガバノコウヤボウキでは鋭い鋸歯が葉身の上半部に見られます。葉にも注目して観察してみてください。
ハトムギ(イネ科)


薬用植物区にて果実が実っています。株自体は傷んできましたが、今のタイミングで紹介するのは理由があって。

本種は熱帯アジア原産の植物で、日本には古くに渡来した1年生草本です。みなさんも某・お茶のCMで、その名を聞いたことがあるのではないでしょうか。日本では健康食品として利用されるほか、果実の苞鞘(ほうしょう)と頴(えい)を除去し、精白したものを「薏苡仁(よくいにん)」とよび、薬用に利用します。また、東南アジアでは食用にも利用され、ミャンマーでは辺境の少数民族が本種を陸稲とともに畑で栽培し、主食として利用しているそうです。


みなさんは小さいころ、ジュズダマの果実で遊んだことはありますか?ハトムギはジュズダマと同じ種の植物で、現在はジュズダマの変種として扱われています。ハトムギの苞鞘は比較的割れやすく、指に力を入れると中の種仁を取り出せますが、ジュズダマの苞鞘は非常に硬く光沢があるため、糸を通してブレスレットやネックレスを作ることができます。ジュズダマは日本各地に分布し、川沿いや放棄された水田、河川敷など湿った場所を好みます。

冒頭の含みは、野生のジュズダマの成熟を待ったために肝心のハトムギの株が傷み始めるという失態でした。9月18日現在、それでもジュズダマの果実はまだまだこれから。出勤前の時間では成熟した果実は12個しか採れず、小さな輪っかしか作れませんでした。幼少期以来、久しぶりに作ってみましたが、やってみるとこれがなかなか楽しかったです。
広報課 西村佳明

