ヒメヒゴタイが見ごろです(10/23更新)

今週の見ごろの植物

毎週、園内を巡回しておとどけします。

ヒメヒゴタイ(キク科)
ヒメヒゴタイ さくら・つつじ園にて10/23撮影

北園のさくら・つつじ園や南園の石灰岩植生園など、園内各所ではヒメヒゴタイが見ごろです。本種は北海道から九州の日当たりのよい草原に生育します。

総苞片には弁化した付属体を持つ
アザミの仲間と違い、葉に鋭い棘はない

花を観察する際は、つぼみにも注目してみてください。本種の総苞片には、先端に付属体とよばれる弁化した部分があり、つぼみの状態でも花弁のような淡紅色が美しい植物です。アザミに似た赤紫色の頭花(とうか)を咲かせますが、本種はアザミの仲間(アザミ属 Cirsium)ではなく、トウヒレンの仲間(トウヒレン属 Saussurea)。アザミの仲間でよく見られる、葉の縁にある鋭い棘もありません。

ヒメヒゴタイの筒状花

では、花をじっくり観察してみましょう。

キク科の植物の多くで見られる花(頭花)は、小さな花(小花)が集まった集合体が「一つの大きな花のように」振る舞います。本種の頭花は、筒状花とよばれる多数の小花からなります。筒状花を詳しく見ると、基部に子房があり、その上には葯がストローのような筒状に合着した「集葯雄しべ」があります。雌しべは集葯雄しべの筒の中を伸長し、花柱によって花粉が押し出されます。やがて雌しべの先端は二叉します。また、5枚の花弁が合着した花冠は筒状になっており、先端は5つに裂けています。鮮やかな花色に誘われて訪れた虫の身体に花粉が付着し、別の花へ運ばれることで受粉につながります。

本種の生育地である草原は、温暖で湿潤な日本では、草刈りや野焼きなどによって定期的に人の手が加えられなければ、やがて木々が侵入し、森林へと遷移(せんい)していきます。かつて、家屋の屋根が「かやぶき」だったころには、かやぶき屋根の材料を得るための草刈り場として草原が維持されてきました。

本種は一回結実性の二年草で、発芽した翌年に開花・結実して親株は枯れてしまいます。先にも述べたとおり、本種は日当たりのよい草原を好みますが、それは発芽したばかりの実生(みしょう)も同じ。つまり、親株が毎年生き続ける植物ではないので、本種が安定的に子孫を残して繁栄するためには、親株が枯れた後にも種子が発芽し、実生が成長できるような明るい環境が必要です。

しかし、ライフスタイルの変化による遷移や宅地造成などによって日当たりのよい草原は減少し、それに伴って本種も多くの地域で絶滅が危惧されています。高知県レッドデータブック(2022)では準絶滅危惧(NT)、環境省レッドリスト(2025)では絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定されています。希少な花を、秋晴れの空と一緒に撮影してみませんか。

ハナカズラ(キンポウゲ科)
ハナカズラ 回廊付近の分岐にて10/23撮影

回廊から展示館に向かう途中にある分岐のそばではハナカズラが見ごろです。花が咲くつる植物?和名からは何の仲間かイメージできませんが、本種は実はトリカブトの仲間(トリカブト属 Aconitum)。日本三大有毒植物の一つに数えられるトリカブトの仲間だけあって、本種も全草にアコニチンをはじめとするアルカロイドを含み、有毒です。この仲間の多くは萼片が発達し、舞楽の楽人がかぶる「鳥兜」に似た形の花を咲かせます。

本種は国内に自生するトリカブトの仲間で唯一のつる性です。国内では九州にのみ自生し、低地や山地の林縁や草原に生え、他の植物に巻き付きながら生長します。植林や土地開発、観賞や商業目的の乱獲によって激減し、現在ではごく限られた場所でしか見られません。環境省レッドリスト(2025)では絶滅危惧IB類(EN)に指定されているほか、2020年2月には第一種国内希少野生動植物種に指定され、種の保存法によって捕獲・採取・殺傷・損傷、譲渡し等が規制されています。

いろんな意味で妖しい魅力あふれる花を、今回は落ちていた花を使って、おっかなびっくり分解してみます。

ハナカズラの花の縦断面
ハナカズラの花の分解

花は背萼片1枚、側萼片2枚、下萼片2枚の計5枚の萼片が花冠状に発達します。じゃあ花弁はどれかというと、花冠の内部にある、距(蜜腺)を備えた2枚が花弁です。雌しべは3~5個あり、その周囲を多数の雄しべが取り囲んでいます。

花弁の形状はトリカブト属の同定の手掛かりになります。花弁の形状で大まかに分けると、距に向かって細くなっていくタイプと花弁の上部が膨らむタイプがあり、ハナカズラは後者になります。なかなか内部まで観察するのは難しい種類ですが、この機会に普段は見えない花の内部を覗けたのはいい経験になりました。

シャクチリソバ(タデ科)
シャクチリソバ 南園・お馬路にて10/23撮影

南園のお馬路では、シャクチリソバが白い花を咲かせています。インド北部から中国原産で、中国では「金蕎(きんきょうばく)」とよばれ、薬用に利用されてきた植物です。日本には昭和初期に導入され、薬草園などで栽培されたものが逸出し、本州・四国・九州の河川敷など湿り気のある環境を中心に野生化しています。同属のソバに似ますが、多年生で太い地下茎を持ちます。地下茎のようすからシュッコンソバとよばれたり、若葉を食用にすることからヤサイソバとよばれることもあります。

シャクチリソバの花(長花柱花)の拡大 花柱が雄しべより長く突き出る

花をよく見ると、白い花被片の間から赤紫色の葯がのぞいています。本種は萼片と花弁の区別がなく、5枚の花被片からなる花の中央には、8本の雄しべと1本の雌しべがあります。雌しべの先には3本の花柱が伸びています。

シャクチリソバには、花柱が雄しべより長い「長花柱花」と、雄しべより短い「短花柱花」の2タイプがあります。これは、同属のソバにも見られる「異花柱花性」とよばれる特徴です。異なるタイプの花同士で受粉しやすくなる仕組みで、ソバでは異なるタイプの花の間で受粉することで結実します。園内のシャクチリソバを観察してみると…残念。長花柱花ばかり。短花柱花を確認することはできませんでした。思い返してみると、確かに園内で結実を見た覚えはありません。普段はあまり意識することのない花の内部に、こんな違いが隠れているのも植物の面白いところです。

おまけ①:キイレツチトリモチの状況
キイレツチトリモチ 土佐の植物生態園にて10/23撮影

今年も当園の隠れた人気者、キイレツチトリモチの花序が地面から顔を出しました。もう間もなく開花を迎えそうです。本館の受付窓口そばから土佐の植物生態園をご覧いただくと、道の両側に石垣があります。その石垣に設置した枕木の足場を上ると、一段高いところにトベラがあり、その株元で観察いただけます。

10月23日現在、花序に点在する雄花はまだ開花していません。地面から顔を出しているものはまだ少ないものの、キノコのような姿をした花序は傷みも少なく、きれいな状態でご覧いただけます。

おまけ②:ツリフネソウは ‘忍耐がない?’
ツリフネソウの自動散布 南園にて10/22撮影

9/18更新のブログで紹介したツリフネソウ。果実が熟してきました。ツリフネソウは「自動散布」とよばれる方法で種子を散布する植物です。成熟した果実の果皮はねじれて張力が生じ、接触などのわずかな刺激をきっかけに、果皮が勢いよく巻き込むように弾け、種子を周囲に飛ばします。見ごろの植物の調査の際に果実にそっと触れてみると……パチン! 小気味いい音とともに勢いよく弾けて種子が飛び出しました。ツリフネソウの属名 Impatiens は、ラテン語で「忍耐がない」「我慢できない」という意味に由来します。触れられるのを我慢できずに弾けて種子を飛ばす一瞬を、ぜひ動画でご覧ください。

広報課 西村佳明