ウコンが咲いています(8/7更新)

今週の見ごろの植物
What’s in Bloom

毎週、園内を巡回しておとどけします。
ウコン(ショウガ科)

北園の薬用植物区では、ウコンが花を咲かせています。熱帯アジア原産で霜や低温に弱いため、国内では主に沖縄や鹿児島(種子島・奄美大島)などの温暖な地域で栽培されています。

英名はターメリック(Turmeric)で、地下にあるショウガのような根茎を輪切りにすると濃いオレンジ色を呈します。根茎を乾燥させて粉末状にしたものはカレー粉や沢庵の着色料などに用いるほか、根茎を茹でて乾燥させたものを生薬「鬱金(うこん)」とよび、健胃薬や軟膏などに用います。根茎に多量に含まれる黄色の色素はクルクミンを主成分とするクルクミノイド類です。タッパーにカレールーを直接入れるとタッパーに色移りすることはないですか?あれは、クルクミンが着色料にされるほど着色する力が強いことに加え、水に溶けにくく油に溶けやすい性質(難水溶性、脂溶性)があって、タッパーのプラスチックに強固に張り付くからです。

さて、脱線しましたが、今回も花を詳しく観察してみましょう。本種は葉の葉柄(軸の部分)が重なってできた偽茎から花序を伸ばします。花序は葉が変化した多数の苞が重なって円柱状になっていて、花は花序の中段から下段にある緑色の苞の間(腋部)からでてきます。花序の上部の苞は白色で先が淡桃色となっていて遠くからも花のように目立ち、訪花昆虫を呼び寄せる役割があります。上段の苞には花はつきません。花をのぞき込むと見える2つの牙のようなものは1本の雄しべ(葯)です。

分解してみました。花冠は3枚の花弁が合着して筒状になり、その先端は3つに分かれます(花冠裂片)。写真中央下段の黄色の唇弁は2個の仮雄しべ(機能しない雄しべ)が合着して弁化したもので、訪花昆虫の足場になります。柱頭は2つの牙のように見える葯に挟まれています。花の基部には薄い膜状の3枚の萼が合着し短い筒状になっていて、子房(胚珠)を包みます。ちなみにウコンは3倍体で結実せず、増殖はもっぱら根茎による栄養繁殖です。
クサギ(シソ科)

こんこん山広場でご覧いただけます。日本各地で見られるほか、朝鮮半島、中国、台湾、フィリピンに分布する落葉低木です。本種は日当たりの良い場所を好み、伐採跡地や崩落地など明るい攪乱地にいち早く侵入する「先駆植物(パイオニア・プランツ)」で、他の樹種が成長し暗くなると消えていきます。


和名は茎や葉に触れると独特の臭気(私は青臭く感じます)があることから。臭気があるものの、若芽を茹でて水にさらして食用にする地域もあります。一方で、花には甘い芳香があり、蜜も分泌するためアゲハチョウの仲間をはじめとする蝶や、スズメガの仲間などの蛾がよく訪花します。


クサギの花は雄しべと雌しべが同居する「両性花」ですが、雄しべと雌しべの機能するタイミングが違います。つまり、雄しべが機能する「雄性期」と雌しべが機能する「雌性期」があって、タイミングをずらすことで自家受粉を防ごうとします。
クサギの場合は咲いた直後は雄性期で、その翌日ごろ雌性期に転換する「雄性先熟」です。観察する花が雄性期か雌性期かは、花を観察すればわかります。開花直後は紫色の花粉にまみれた葯が上に反り返り、蜜を吸いに訪花した昆虫の身体に花粉が付きます。その時雌しべは下を向き、物理的にも花粉が付きにくくなっています(雄性期)。翌日には雄しべが下がり、代わりに雌しべが立ち上がります(雌性期)。この状態でほかの花の花粉が付いた虫が訪れると授粉し、結実します。結実するころには萼は鮮やかな赤紫色になって平開し、果実も美しいです。
クサギをご覧になる際には、ぜひ花に顔を近づけてその甘い香りと、葉にそっと触れてその独特の臭気をそれぞれ嗅いでみてください。
ヒナシャジン(キキョウ科)

回廊で鉢の展示を行っています。本種は高知県と愛媛県の石灰岩地にのみ分布し、岩場や疎林地に生えます。もともと分布が限られる稀少な植物ですが、自生環境の変化や園芸目的による盗掘などによって個体数が減少し、環境省レッドリスト(2020)では絶滅危惧Ⅱ類(VU)に、高知県レッドデータブック(2022)では絶滅危惧IB類(EN)にそれぞれ指定されています。
牧野博士ゆかりの植物で、彼が横倉山で採集した標本をロシアのマキシモヴィッチ博士に送ったところ、A. marsupiiflora の変種であるとの回答があり、これに松村任三博士が命名した和名ヒナシャジンをつけて、1890(明治23)年「植物学雑誌」に掲載しました。その後、1892(明治25)年、牧野自身が横倉山で、また吉永悦郷氏が不入山で採集した標本をもとに、新種 A. maximowicziana Makino として発表。この学名は、マキシモヴィッチに献名したものです。


和名にあるシャジンはツリガネニンジンのこと。ツリガネニンジンに近縁で、線の細いその草姿を雛に例えています。希少な花をぜひご覧ください。
広報課 西村佳明

