【5/9】見ごろの植物を更新しました
お昼ごろになると半袖が丁度いいくらいで、見ごろの植物の調査のため園内をぐるりと回っていると汗をかいてきます。園内ではツツジの仲間も終盤となって、代わりにアヤメやカキツバタなどアヤメ科の仲間がそれぞれ見ごろとなり、初夏を感じる顔ぶれとなってきました。日中の散策は飲み物を持ってお楽しみくださいませ。それでは、今週の見ごろの植物をご紹介します。
見ごろの状況

今週の見ごろの植物
What’s in Bloom

毎週、園内を巡回しておとどけします。


本館と展示館を結ぶ回廊の、黒いフェンスに絡まってピンク色の一重の花を咲かせています。タカネという和名の通り、本州と四国の高山に分布するバラの仲間で、四国では西日本最高峰の石鎚山や第二位の剣山を含む、標高1,400メートル以上の山地でのみみられる希少な植物です。氷河期のころに南へ分布を広げた本種が、氷河期が終わって温暖になるにつれ、少しでも冷涼な北へ逃避する過程で、一部が本州や四国の高山に取り残されたと考えられています。当園がある五台山は標高130メートル程度と本種にとっては暑いはずですが、名物職員の藤井や北園スタッフの手厚い管理のもと毎年多くの花を咲かせています。普段はなかなか目にできない『高嶺の花』が非常に見やすいところに植栽されていますので、ぜひこの機会にご覧ください。



展示館の中庭でご覧いただけます。国内では兵庫県(六甲山系)、九州(長崎県・佐賀県・熊本県)、久米島、八重山諸島に分布します。花はガクが変化して形作られていて花びらはありません。ウマノスズクサの仲間はユニークな形の花を咲かせるものが多く、本種の花はまるでサックスのよう。青臭い、特異な臭いでショウジョウバエなどを誘引し、花筒の奥へといざないます。牧野博士は1936(昭和11)年、兵庫県博物学会神戸支部の採集会で五社駅を訪れた際に、先着していた会員が見つけていた本種をみるなり、その場で地元の名を冠した「アリマウマノスズクサ」という和名を付けました。参加者一同がにわかに活気づき、みんなで万歳三唱したと記録に残っており、その時の楽しそうな情景が目に浮かびます。本種を含むウマノスズクサの仲間はアリストロキア酸などの有毒物質を含んでいますが、チョウの一種であるジャコウアゲハの幼虫はこれらの葉を食べることで体内に毒を蓄積し、鳥などの天敵から身を守っています。話は脱線しますが、クロアゲハやアゲハモドキなどジャコウアゲハによく似たチョウやガが知られています。ベイツ型擬態といって、毒蝶であるジャコウアゲハの姿を真似ることで天敵に狙われにくくしていると言われており、そんなちゃっかり者が生まれる生き物の進化というのは神秘的で大変おもしろいなと感じます。


こんこん山広場のトイレのそば、小高い丘の斜面にまとまった群落があります。5/8現在、咲きはじめで、これからどんどん花数が増えていきます。さて、皆さまはアヤメとハナショウブ、カキツバタの区別はつきますか?『いずれ菖蒲(あやめ)か杜若(かきつばた)』という慣用句がありますが、(1)どちらも優れていて甲乙つけがたいという意味で使われたり、(2)よく似ていて見分けがつきにくいという意味でも使われたりします。アヤメの花は大きく垂れさがる3枚の外花被片(がいかひへん)と、小型で直立する3枚の内花被片(ないかひへん)から成ります。ハナショウブとカキツバタの花も基本的には同様の構造をしていますが、見分けがつかないという話をよく聞きます。違いを表にまとめてみましょう。

ぜひ覚えて、アヤメの仲間を観察してみてください。
広報・ガイド班長 西村 佳明
マークの植物名をクリックすると植栽場所や詳しい説明がご覧いただけます。
今週の見ごろの植物
今週の見ごろマップ

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