【6/27】見ごろの植物を更新しました

27日(金)に西日本各地で梅雨明けが発表されました。あっという間の梅雨明けで、四国では平年よりも20日ほど早いようです。また園内でじりじりとした日差しと蒸し暑い日々がやってくるかと思うとぞっとします。さて、7月6日(日)までの土日限定で『初夏のガーデンツアー』を開催中です。ヒメアジサイやハンゲショウなどの草花が彩る園内を、職員がさまざまな視点から解説する人気のガイドツアーで、①10:30 ②13:30の1日2便を実施します。当日、朝9時から先着順で受付しますので、ぜひ奮ってご参加下さい。

初夏のガーデンツアー

それでは今週も見ごろの植物をご紹介します。

見ごろの状況

アジサイの仲間(アジサイ科)…★★☆ ヤマアジサイの仲間は見ごろが過ぎ、ウズアジサイガクアジサイ、近縁種のアメリカノリノキ‘アナベル’などが見ごろです。

今週の見ごろの植物

毎週、園内を巡回しておとどけします。

ベニバナ(キク科)
ハンゲショウ(ドクダミ科)
アメリカノリノキ‛アナベル’(アジサイ科)
イズアサツキ(ヒガンバナ科)
スモモ’メスレー’(バラ科)
ノカンゾウ(ワスレグサ科)
ウズアジサイ(アジサイ科)

サクユリ(ユリ科) Lilium auratum Lindl. var. platyphyllum Baker

花被片は6枚で内側は中央の脈に沿って黄色を帯び、赤い点が点在する(6/25撮影)
2鉢を展示中です(6/25撮影)

本館のウッドデッキで鉢展示が始まりました。本種は伊豆諸島固有のユリの仲間で、本州(近畿以東)の山地に生育するヤマユリの変種です。世界で最も大型の花をつけ、有名な園芸品種(オリエンタル系)である‘カサブランカ’などを生み出した交配親としても知られています。和名は伊豆諸島・青ヶ島の地方名でサックイネラ(イネラはユリのこと)と呼ばれたことに由来します。牧野博士は純白で香気強い本種の花をじつに見事であると絶賛し、日本のユリの仲間で最も巨大で王様であると述べています。ぜひその香りも楽しんでみてください。6/27(金)現在、葯(やく)はまだ裂開していませんが、裂開後は花粉に注意。衣服に付くと洗濯をしてもなかなか落ちないので、香りを嗅ぐ際はお気をつけください。

ムジナモ(モウセンゴケ科) Aldrovanda vesiculosa L.

正午ごろの1-2時間ほどしか咲かない非常に短命な花(6/26沖撮影)
まもなく開花しそうなつぼみ(6/27撮影)
ユスリカの幼虫を捕らえたムジナモ(6/18宮田撮影)

展示館の中庭にある水がめの中で浮かんでいます。日本(本州)、ユーラシア、アフリカ、オーストラリアに分布し、湖沼などの水中に浮遊する多年生の水生植物です。本種はまた、二枚貝のような葉で動画のようにミジンコやボウフラなどを捕える食虫植物でもあります。水面上に直径5~6mmの小さな白い花を咲かせますが、真昼の1時間ほどのみ開花するので滅多に見ることができません。今年は6/24(火)と6/26(木)に開花し、6/27(金)現在、明日にも開花しそうなつぼみが一つあります

1890(明治23)年、28歳の牧野博士は江戸川の河川敷(現在の東京都江戸川区北小岩)で、用水池に浮かぶ奇妙な水草を発見。これを当時出入りしていた東京大学理学部植物学教室に持ち込んだところ、海外の書物に載っている有名な食虫植物で、学名がAldrovanda vesiculosaであること、ヨーロッパ、インド、オーストラリアの一部にのみ分布していることを矢田部良吉教授から教えてもらいました。牧野博士はムジナモの詳細な植物図を完成させ「植物学雑誌」にて発表。開花した花が描かれた精密な図は世界に衝撃を与え、ドイツ人植物学者エングラー監修の世界的な権威ある書物『Das Pflanzenreich(ダス・プランツェンライヒ)』に転載、日本の牧野富太郎の名が世界に知られるきっかけとなりました。国内のムジナモの自生地は開発などによりほぼ消滅しており、埼玉県羽生市の宝蔵寺沼では、羽生市ムジナモ保存会によって積極的に自生地復元の努力が続けられています。

ナゴラン(ラン科) Phalaenopsis japonica (Rchb.f.) Kocyan & Schuit.

今年は例年以上に花着きが良い。
本種は木本の樹皮に張り付いて生育する着生ランの一種。(6/25撮影)
花茎を下垂し、10花程度を総状につける。
外花被片には淡紫褐色の線が数本入ってチャーミング。(6/25撮影)

温室へ向かう連絡道の途中、展望台を過ぎ、左手に下りの石階段がある手前、ちょうど目線の高さくらいの位置に、ツブラジイの樹皮に張り付いた本種がご覧になれます。本州(福井県・紀伊半島・隠岐)、伊豆諸島、四国、九州、琉球、朝鮮(南部)に分布し、常緑広葉樹林内の樹幹または岩上に着生するランの仲間です。和名は自生地の沖縄県名護市に由来します。当園では学名を Phalaenopsis japonica としていますが、分類がいまだ混乱しており、Sedirea japonicaHygrochilus japonicus など研究者によって見解が異なります。今年は特に花着きが良くこの機会にぜひ観察・撮影してほしいのですが、薄暗い場所で少し離れているので、撮影の際は明るめの望遠レンズがついたカメラがおすすめです。

ムサ・シッキメンシス(バショウ科) Musa sikkimensis Kurz

温室の外に植栽されている(6/25撮影)
赤褐色の苞の間から花が顔を覗かせる。5つのおしべの中央に1本のめしべが見える(6/25撮影)

温室の脇に植栽されており、赤褐色の大きな苞に包まれた花をご覧いただけます。本種はインド北東部のヒマラヤ地域に分布するバナナの仲間で、果実は食用となりダージリンバナナという名称で流通します。比較的耐寒性が高いため屋外でも越冬できるものの、冬の間に多少傷んだり成長が止まったりで、園内では中々開花しません。一部は結実も見られるので、成長の様子を引き続き観察してみようと思います。

広報・ガイド班長 西村 佳明

マークの植物名をクリックすると植栽場所や詳しい説明がご覧いただけます。

今週の見ごろの植物

ハス’金輪蓮’(ハス科)
ナゴラン(ラン科)
アメリカノリノキ‛アナベル’(アジサイ科)
ベニバナ(キク科)
ヨコグラノキ(クロウメモドキ科)
ヒロハコンロンカ(アカネ科)
ヒメユリ(ユリ科)
ヒギリ(シソ科)
ハンゲショウ(ドクダミ科)
テバコマンテマ(ナデシコ科)
スモモ’メスレー’(バラ科)
シロバナクズ(マメ科)
サクユリ(ユリ科)
コガネバナ(シソ科)
オウゴンオニユリ(ユリ科)
アリストロキア・サルヴァドレンシス

今週の見ごろマップ

「見ごろ植物マップ&フォト」過去1年分もダウンロードできます。「見ごろカレンダー」のページで確認してみてください

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