【7/4】見ごろの植物を更新しました

高知県では例年よりも5,6℃高い日が続き、熱中症警戒アラートが発表される日もあります。そんな中でも園内各所では暑さに負けず咲く、魅力的な花もありますので、本館や展示館など冷房が効いた屋内で休憩しつつ、水分・塩分の補給を忘れずに園内散策をしてみませんか。さて、6/14(土)から土日限定で開催してきた『初夏のガーデンツアー』も今週末、7/5(土)と6(日)を残すのみとなりました。ラストを飾るガイド担当者は高知県内の分布調査を担い、四国の野生植物に詳しい「田邉」、多肉植物に造詣が深いサボテン王子こと「上杉」、ガイドと見ごろを担当している私、西村になります。当日、朝9時から先着順で受付しますので、ぜひ奮ってご参加下さい。

初夏のガーデンツアー

今週は園内で見ごろとなっているユリの仲間(ユリ科ユリ属 Lillium)に絞ってご紹介しようと思います。

今週の見ごろの植物

毎週、園内を巡回しておとどけします。

キバナノセッコク(ラン科)
ヒロハコンロンカ(アカネ科)
スズカケソウ(オオバコ科)
トサオトギリ(オトギリソウ科)
スモモ’メスレー’(バラ科)
ノカンゾウ(ワスレグサ科)
ヘラノキ(アオイ科)

まずはユリ科について。

ユリ属の花の構造(写真はサクユリ)

植物を体系的に整理し、近しいものでグループ分けをする枠組みを分類体系と呼びます。これまでの分類体系は新エングラー体系やクロンキスト体系など、見た目(形態的特徴)に基づいてグループ分けをしており、ユリ科は大所帯のグループでした。近年では類縁関係を調べるためにDNA分析を用いるようになり、従来のユリ科は、実は異なる複数の系統を含むグループであることが明らかとなっています。現在主流となりつつあるAPG分類体系では多くの種がユリ科を離れ、皆さんが思うユリの仲間(ユリ属 Lillium)のほか、チューリップ(チューリップ属 Tulipa)やホトトギスの仲間(ホトトギス属 Tricyrtis)など‘こじんまり’となりました。ユリ科の花は多くが3数性で、花被片は普通6枚(本来の花びら=内花被片3枚と、がくが花びらのようになったもの=外花被片3枚)、おしべは普通6本、将来タネになる胚珠を格納している心皮は普通3つです。

コオニユリ(ユリ科) Lilium leichtlinii Hook. f. pseudotigrinum (Carrière) H.Hara et Kitam.

花被片は橙赤色で濃色の斑点があり、強く反り返る。
オニユリと違って葉腋(ようえき:葉の付け根)に珠芽(しゅが:むかごのこと)は生じない。

こんこん山の草原エリアで見ごろとなっています。国内では北海道から琉球(奄美大島以北)に分布し、明るい山地や草原に生育します。和名のとおり、のちに紹介するオニユリに似ていますが、珠芽(しゅが:むかご)ができず、花や草体が全体的に小柄であること、オニユリは結実しないが本種はよく結実する、などの点で見分けがつきます。鱗茎(りんけい:球根のこと)は苦みが少なく食用に供され、関西でよく食される「ゆり根」は本種の栽培品種です。

ヤマユリ(ユリ科) Lilium auratum Lindl.

茎は1メートル近くあり、大型の花がよく目立つ。つぼみも多くあり、しばらく楽しめそう。
花被片の内側は中央の脈に沿って黄色を帯び、赤い点が点在する。花粉は赤褐色。

園内では主に、北園の芝生広場から階段を降りたところと、南園の石灰岩植生園から結網山へ登り始めすぐの2か所で花がご覧になれます。本州(近畿地方以東)に分布する日本特産種で、山地や丘陵地に生育します。先週紹介し、見ごろも続いているサクユリ( Lilium auratum Lindl. var. platyphyllum Baker)は本種の変種にあたります。花も見事ながら香りも強く、花とともに香りもぜひお楽しみください。その際は顔や服に花粉が付かないようお気を付けくださいませ。

タキユリ(ユリ科) Lilium speciosum Thunb. var. clivorum S.Abe et Teruo Tamura

花被片は淡紅色を帯びた白色で、濃紅色の斑点があって強く反り返る。
カノコユリと異なり、茎は細くて下垂し、花はうつむき気味である。

園内各所に植栽がありますが、南園の温室そばから50周年記念庭園へと下るスロープの壁面の群落が一番乗りで咲きはじめました。本種は山地の崖などに生えるカノコユリの変種で、四国と長崎県西彼杵(にしそのぎ)半島・九十九島(くじゅうくしま)に分布します。土佐の言葉で崖のことをタキというそうで、生育環境が和名の由来となっています。茎が太くて立つカノコユリと比べ、本種は茎が細くて下垂し、花はうつむき気味になります。

オニユリ(ユリ科 Lilium lancifolium Thunb.

花被片は橙赤色で濃色の斑点があり、強く反り返る。
コオニユリと異なり、葉腋に珠芽を生じる。
鱗茎を鱗片状に剥がしたものを蒸して乾かしたものを
百合(びゃくごう)と呼ぶ。

南園の石灰岩植生園で咲きはじめており、まもなく土佐の植物生態園でも開花しそうです。本種は北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国に分布し、田んぼのあぜなど人里近くで見られます。日本で見られる本種の多くは3倍体で結実しません。よく似たコオニユリとは異なり、葉腋に珠芽(しゅが:むかご)を多数生じ、無性生殖します。上記のとおり日本各地で見られますが、古い時代に日本に渡来したとする説もあります。展示館中庭とその周辺に植栽があるオウゴンオニユリは長崎県対馬に分布するオニユリの黄花変種で、1933(昭和8)年に牧野博士が「植物研究雑誌」に発表しました。本種の鱗茎は食用に供する場合もあるそうですが、個人的には苦みが強くてあまりお勧めしません。一方、鱗茎を鱗片状に剥がしたものを蒸して乾かしたものを百合(びゃくごう)と呼んで、滋養強壮や鎮咳、精神安定などを目的に、辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)などの漢方薬に配合されます。

豪華で美しいユリの仲間をお楽しみください。

広報・ガイド班長 西村 佳明

マークの植物名をクリックすると植栽場所や詳しい説明がご覧いただけます。

今週の見ごろの植物

コオニユリ(ユリ科)
ハス’金輪蓮’(ハス科)
ナゴラン(ラン科)
ヨコグラノキ(クロウメモドキ科)
ムカデラン(ラン科)
ヒロハコンロンカ(アカネ科)
ヒギリ(シソ科)
ハンゲショウ(ドクダミ科)
テバコマンテマ(ナデシコ科)
タキユリ(ユリ科)
スモモ’メスレー’(バラ科)
シロバナクズ(マメ科)
サクユリ(ユリ科)
ザーバオバブ(アオイ科)
コガネバナ(シソ科)
アリストロキア・サルヴァドレンシス

今週の見ごろマップ

「見ごろ植物マップ&フォト」過去1年分もダウンロードできます。「見ごろカレンダー」のページで確認してみてください

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