【12/20】見ごろの植物を更新しました

本館と展示館を結ぶ回廊では、牧野博士が愛した植物バイカオウレン(キンポウゲ科)が咲きはじめました。12/20現在、5,6輪の開花ですが、花数も少しずつ増えていき、1月中旬ごろにはたくさんの花がご覧いただけるでしょう。

それでは、今週も園内をくまなく調査した「いまが見ごろの植物」をガイド担当がお届けします。

今週の見ごろの植物

毎週、園内を巡回しておとどけします。

12/20現在のバイカオウレン(キンポウゲ科)
ヒロハノミミズバイ(ハイノキ科)
マルバテイショウソウ(キク科)
コブシの冬芽(モクレン科)
キイレツチトリモチ(ツチトリモチ科)
ノジギク(キク科)

「冬は花も少ないし植物園にわざわざ行かなくても…。」そんな声が聞こえてきそうです。この時期は確かに、屋外に咲く花はめっきり減ってしまいますが、冬は冬の植物の楽しみ方があります。今週はそんな楽しみ方の一つをご紹介できればと思います。

みなさんは冬芽(休眠芽)を知っていますか?日本では毎年、冬になるとこごえるような寒さと乾燥がやってきます。私たちは足があるので屋内に逃げ込めますが、根を張る植物はそうはいきません。光合成をするための「葉」や、子孫を残すための「花」は植物が生存するうえで欠かすことができない大切な器官であり、種類によって低温への耐性に差はあれど、冬の低温や乾燥からこれらを守る必要があります。その方法の一つが冬芽を作って越冬することであり、冬芽はその形状で大まかな種類が分かるほど姿かたちは様々なので、冬芽を観察するのも楽しいものです。温室でたくさんの花を観察した後は、咲きはじめのバイカオウレンに加えて冬芽も探してみませんか?

コブシ:冬芽は毛が密生。写真の芽は花芽と葉芽を内包する(混芽)。
冬芽を切ると、3月ごろに咲く花が確認できる。
花芽と葉芽を内包し、開花から少し遅れて葉が展開する。

コブシ(モクレン科)の冬芽は毛が密生し、まるでコートを着ているかのような姿をしています。本種の冬芽は大小あり、大きい芽は混芽と呼ばれる、花芽と葉芽を内包した芽です。混芽を切ってみると既に開花の準備ができていることが分かります。ちなみに、この冬芽は漢方薬にも用いられます。冬芽(混芽)を乾燥させたものを辛夷(しんい)と呼び、蓄膿症など排膿を目的に処方される辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)などに配合されます。

ヤブツバキ(鱗芽):うろこ状の芽鱗(がりん)に覆われる。大きい芽が花芽、隣の小さな芽が葉芽
花芽には一つの花が目いっぱいに詰まっている。
分解するとたくさんの芽鱗を重ね着しているのが分かる。

ヤブツバキ(ツバキ科)の冬芽はうろこ状の芽鱗(がりん)に覆われ、鱗芽(りんが)と呼ばれます。芽鱗は葉が変化したもので、幾重にもなった芽鱗が低温や乾燥から花や葉を守ります。本種の冬芽は左の写真のように大小あり、小さく細い芽は葉芽、大きい芽は花芽です。鱗芽を持つものは本種のほか、クスノキ科やブナ科、カエデの仲間、サクラの仲間など多岐にわたります。

ビロードムラサキ(裸芽):葉が小さいまま冬を越す。
オニマタタビ(隠芽):膨らんだ葉痕(落葉した痕)に埋まるように冬芽がある。
ムジナモ(殖芽):栄養分をため込んだ芽だけになって水底に沈む。

白い果実が実り始めたビロードムラサキ(シソ科)の冬芽はもっと簡素です。裸芽(らが)と呼ばれ、芽鱗はなく葉が小さいままで冬を越します。温室のそばに植栽されたオニマタタビ(マタタビ科)の冬芽は隠芽(いんが)と呼ばれ、その年に落葉した部分(葉痕)に埋まるように芽があります。展示館の中庭のムジナモ(モウセンゴケ科)は成長して得た栄養分を集めて殖芽(しょくが)と呼ばれる芽を作って水底に沈みます。冬芽に注目して園内を散策してみると新しい発見がきっとありますよ。

広報課ガイド担当 西村佳明

マークの植物名をクリックすると植栽場所や詳しい説明がご覧いただけます。

今週の見ごろの植物

マルバテイショウソウ(キク科)
マユミ(ニシキギ科)
ヒロハノミミズバイ(ハイノキ科)
ナカガワノギク(キク科)
ツワブキ(キク科)
タイワンツバキ(ツバキ科)
タイキンギク(キク科)
センリョウ(センリョウ科)
センニンソウ(キンポウゲ科)
シオギク(キク科)
コブシ(モクレン科)
コヒガンザクラ‘十月桜’(バラ科)
キバナアマ(アマ科)
カンツバキ’勘次郎’(ツバキ科)
カイドウツバキ(ツバキ科)
イロハモミジ(ムクロジ科)

今週の見ごろマップ

「見ごろ植物マップ&フォト」過去1年分もダウンロードできます。「見ごろカレンダー」のページで確認してみてください

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